・・・今人の智能古人に比して劣れるが故か。将また時勢の累するところか。わたくしは知らない。わたくしは唯墨堤の処々に今なお残存している石碑の文字を見る時鵬斎米庵らが書風の支那古今の名家に比して遜色なきが如くなるに反して、東京市中に立てる銅像の製作西・・・ 永井荷風 「向嶋」
・・・又文学好きだと言われる婦人は、平生文学書類を手にだもしない女に比すれば却て智能に乏しく、其趣味は遥に低いものだと思っていたからである。然し此等の断定の当っていなかった事は、やがて僕等一同が銀座のカッフェーには全く出入しないようになってから、・・・ 永井荷風 「申訳」
・・・もとより智能を発育するには、少しは文字の心得もなからざるべからずといえども、今の実際は、ただ文字の一方に偏し、いやしくもよく書を読み字を書く者あれば、これを最上として、試験の点数はもちろん、世の毀誉もまた、これにしたがい、よく難字を解しよく・・・ 福沢諭吉 「文明教育論」
・・・の開発」であり、明治に向う知識慾であったにはちがいない。しかし、これらの藩学校は、藩という制度の枠にはまっていた本質上、当時の身分制度である士農工商のけじめを脱したものではなかった。「士分の子弟」の智能開発が藩学校での目的であった。この性格・・・ 宮本百合子 「新しいアカデミアを」
・・・をつくり都会の大工場で同じ機械を使って造り出す能率の二倍以上の成績を、農村の子女によってあげている。智能と資本とを縦横に駆使して、イギリスの良品高価に対する良品廉価生産・高賃銀低コストを目ざす科学主義工業という呼び名が、これらの人々によって・・・ 宮本百合子 「新しい婦人の職場と任務」
・・・この科学者は「私は婦人が高度な知能活動に適するとは思わない」という意味の言葉を書いているのであった。女である私たちは、大科学者のこの言葉によって一度は確にしょげるのだけれど、やがてこころひそかな勇気を自分たちの内に感じると思う。何故なら、す・・・ 宮本百合子 「科学の常識のため」
・・・九二九年 労働者と其子弟 二八・七 三四・六 四二・三 農民とその子弟 二二・二 二四・四 二五・一 勤人とその子弟 三三・〇 二五・〇 一九・七 知能労働者 一二・五 一四・・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・ 八年制はつまり現在の高等二年修了と同じになるのだろうから、日本の民衆の一般の智能の水準は、それに準じて向上されるという期待が持たれていいのだろう。国土の面積に比べて日本は鉄道網の発達していることと、小学校のどっさりあることでは世界屈指・・・ 宮本百合子 「国民学校への過程」
・・・ 森鴎外は傑出した智能を持った人であり、科学と文学との美を当時の水準では最高に身に具えた人であった。軍隊の衛生、クラウゼヴィッツの戦争論を訳した筆は即興詩人を訳し、「舞姫」「埋木」「雁」等を書いた。鴎外が晩年伝記を主として執筆したことは・・・ 宮本百合子 「今日の文学の鳥瞰図」
・・・フェルナンデスが智能を空間的なものの訓練に規定するように、行動主義は人間性の原始性と近代文化の物質力に自らを訓練する。即ち行動主義は肉体と機械の発見によって、それらに作用されかつ反作用する個人の感性、智性、意欲の方向と状態を表現すること・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
出典:青空文庫