・・・ 一九三〇年の冬、世界じゅうの注視の的となったソヴェト同盟内の重要な地位にある技師、学者、役人等による大反革命陰謀、産業党の例を見ても、プロレタリア階級の技術家がどんなに大事かは明瞭だ。 ロシア共産党は大会において、生産組合、労働組・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・特高は自分の横顔をしきりに注視しているが、自分は今度のことを機会に自分達の全生活が全くこれまでと違う基調の上に立てられるようになるものだということは知っているのだ。 自分は、立ったままテーブルの上にあった硯箱を引きよせ、墨をすりおろして・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・むっちりしたきれいな手を膝の上においてうな垂れている。中指に赤い玉の指環がささっている。メリンスの長襦袢の袖口には白と赤とのレースがさっぱりとつけてある。―― 程たってから自分は低い声でその娘に聞いた。「つとめですか?」「ええ」・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・一九四六年にはあのように日本民主化のキー・ポイントとして内外から注視された婦人の団体があげられていないのはどうしたわけであろう。日本の青年のこんにちの生活内容は日本の民主化と世界平和のために、彼らに豊富な発言の要求を感じさせている。その青年・・・ 宮本百合子 「今日の日本の文化問題」
・・・ 女は洋傘の甲斐絹のきれをよこに人指し指と、中指でシュシュとしごきながらふるいしれきったつまらないことを云った。 それで自分では出来したつもりで、かるいほほ笑みをのぼせて居る。 私はまるで試験官のようなひやっこいはっきりした心地・・・ 宮本百合子 「砂丘」
・・・ヴェトナムでも、人間関係方面は刻々に変化しつつあり、朝鮮における人間関係方面は、こんにち世界の注視をあつめた変動のもとにおかれている。 国連参加国の内部で、公然と科学の暴力を使用せよと叫んでいる者たちがあることは、もはやかくしようのない・・・ 宮本百合子 「「人間関係方面の成果」」
・・・菅季通の自殺は、太宰治の死、田中英光の死にまさって、こんにちのすべての良心に、人間としていかに生きるかの表現としての政治と文学の関係、そのなりゆきを注視させている。 こんにちプロレタリア文学史をよむひとは、一つの不便にめぐりあっている。・・・ 宮本百合子 「人間性・政治・文学(1)」
友達と火鉢に向いあって手をかざしていたら、その友達がふっと気づいたように、「ああ、一寸、これ御覧なさい。こういうものがあなたの爪にあって?」 左の中指の爪のところをさすのを覗きこんで見ると、そこには薄赤い爪の中ごろ・・・ 宮本百合子 「鼠と鳩麦」
・・・なかにも右の手の中指のはことに目立つ位まっさおでうす気味悪いほど大きい玉をつけた指環。すぐ下手から第二第三の女と非番の老近侍が出て来る。女達二人は極く注意した歩き振りでどんな時でも少し体をうかす様につまさきで歩く。老近侍は大・・・ 宮本百合子 「胚胎(二幕四場)」
・・・それを念頭において今日の政治を観察し、ポツダム宣言に誓われた日本の民主化が巧妙に内外のファシズム勢力の増殖にすりかえられてゆく過程を注視すると、便乗というものの最悪の典型がそこに発見される。日本の小規模な独占資本は、より強大な国外の独占資本・・・ 宮本百合子 「便乗の図絵」
出典:青空文庫