・・・ 彼等は、赤軍兵が張ってくれた後方のテントの中で、手帳をひねくりまわしてはいなかった。突撃に加わり、一緒に泥をほじり、夜の歩哨にも伴れ立った。司令部とともに、視察した。前線での文学の夕べを組織し、即興芝居への台本を提供した。壁新聞を手伝・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・しかも、喧嘩も、恐慌もない時には、低いテントの下に坐り、或は寝そべりながら飲んだり食ったりし、親しげに真面目に語り合いながら河の面を見たりしている彼等。 ゴーリキイにはこれらの人々が「善人なのか、悪人なのか、平和好きなのか、悪戯好きなの・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・「阿呆なこと云うてんと、置いといてやらえな。」「こんな奴置く位なら、石の頭巾冠ってる方が、ましじゃ。」 勘次は今が引き時だと思った。そして、そのまま黙って帰りかけると、秋三は彼を呼びとめた。「勘公、此奴をどうするつもりや。」・・・ 横光利一 「南北」
出典:青空文庫