・・・僕はその新聞記者が近く渡米するのを口実にし、垂死の僕の父を残したまま、築地の或待合へ出かけて行った。 僕等は四五人の芸者と一しょに愉快に日本風の食事をした。食事は確か十時頃に終った。僕はその新聞記者を残したまま、狭い段梯子を下って行った・・・ 芥川竜之介 「点鬼簿」
・・・こんにち揺がない大出版企業の代表者たちが、文化上どのような性質をもつ存在であるかということは、渡米ラッシュの各界代表選出にさいして、出版界だけが人選にゆき悩んでいる実状に語られている。 一九四九年度の文学現象の特質は、このつくられた恐慌・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
きょうの時事新報をみたら、先頃渡米した十人の婦人団がニューヨークについて、女子キリスト青年会を訪問した写真がのっている。高層建築が左右からそびえたって空も見えないレキシントン街を背景に、もんぺをぬいだ赤松常子参議員が、白足・・・ 宮本百合子 「この三つのことば」
・・・お茶の水の卒業後暫く目白の女子大学に学び、先年父の外遊に随って渡米、コロムビア大学に留まって社会学と英文学研究中、病気に罹り中途で退きましたが、その時、荒木と結婚することになり、大正九年に帰朝いたしまして、その後は家事のひまひまに筆にいそし・・・ 宮本百合子 「処女作より結婚まで」
・・・そして、このごろのように幾年ぶりかで国の内外の往来が恢復しはじめると、ユネスコの問題にしろ国際的だし、アメリカへの留学生の出発も国際的な一つのできごとだし、織姫渡米も国際的な現象の一つとなった。 それにつけても、わたしたち日本の婦人は、・・・ 宮本百合子 「それらの国々でも」
・・・を著し、獄中生活の後、渡米してフィラデルフィアで客死した。 自由党が禁圧せられ、国会開設が決定され、今日殆ど総ての作家によって理解されている日本の資本主義の特徴ある性質が組織化されてはっきり正面に押し出されて来ると同時に、文筆、言論の文・・・ 宮本百合子 「文学における今日の日本的なるもの」
古橋広之進君をはじめ五名の水泳代表選手が、来る十一日のパンアメリカ号で渡米する。全米水上選手権大会へ、これらの日本の若い精鋭が出場するようになったことは全日本の明るい関心をあつめている。合宿先である福田屋旅館の板前さんまで・・・ 宮本百合子 「ボン・ボヤージ!」
出典:青空文庫