・・・近頃流行るベルグソンでもオイケンでもみんな向うの人がとやかくいうので日本人もその尻馬に乗って騒ぐのです。ましてその頃は西洋人のいう事だと云えば何でもかでも盲従して威張ったものです。だからむやみに片仮名を並べて人に吹聴して得意がった男が比々皆・・・ 夏目漱石 「私の個人主義」
・・・それぞれの時代の社会事情につれて、次々に生れて来るいろいろな現象に対して、その現象だけとりあげ、いわゆる文化の問題としてとやかくいって来た。そして、一つ一つの現象の根本によこたわっている社会事情にまでつっこんでふれることは、社会問題、経済、・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・妹娘が兄のかくしておいたハタを紙型用にもち出して同級生に、とやかくいわれる場面はおもしろい。しかし、あとでアカハタが村へもっと入るようになってほかの娘も紙型用に学校へもって来るというところは、どうだろうか。何となし読んで、ひっかかった。アカ・・・ 宮本百合子 「稚いが地味でよい」
・・・法律的な立場から見て嬰児を死に到らしめた処置が制裁される事は誰しもとやかく云うべきでない事は知っています。然し女であるものの心持からすると、この場合に云われている母性というものの解釈が何かぴったりしない所があります。山本有三氏が自身の作品を・・・ 宮本百合子 「「女の一生」と志賀暁子の場合」
・・・自分たち若いものの活溌な真情にとって、人間評価のよりどころとは思えないような外面的なまたは形式上のことを、小心な善良な年長者たちはとやかく云う。けれどもねえ、そればかりじゃあないわねえ、その心だと思う。 ところが、いざ自分のその心の面に・・・ 宮本百合子 「女の歴史」
・・・それから私の体のことを、この間うちはとやかく御心配かけ、すみませんでした。目下好調子です。小説も、今回分は僅かでも大体の通ったプランを立てなければならず、そのために時間を多く費しましたが、やっとそれが終り、書きはじめました。「乳房」のときよ・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・そして、社会主義的リアリズムは、世界観などをとやかくいわないで、作家が作家としてリアルにこの社会現実さえ描けば、現実そのものが歴史を語るのだという主張のように説明された。バルザックは王権主義者であったにもかかわらず、彼の作品は当時のフランス・・・ 宮本百合子 「作家の経験」
・・・彼は、現在フランスでは左翼的な立場を明らかにしているジイドの発展性を見ずに不安の文学の代表者のようにかついだり、五十三年も前に死んだドストイェフスキーの作家としての特殊性、歴史性を無視して今日の日本でとやかくさわいでも、それは現実の問題とし・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
・・・ 「宿賃なんかとやかく云わないさ」 「大きなこと云ってるわ」 田舎新聞 ○「寒天益々低落 おい大変だぜ 寒天下落だよ 中央蚕糸 紅怨 紫恨 ◇二度の左褄 上諏訪二業 歌舞・・・ 宮本百合子 「一九二七年春より」
・・・ これまでは文学の問題は文学の枠の中からだけとやかくいわれました。しかしこの段階は誰の目にもはっきり過去のものとしてうつっていると思います。なぜなら以上の三つの問題のどの一つをとってみても、ただ小説の問題とか詩の問題とかにかぎってその狭・・・ 宮本百合子 「一九四七・八年の文壇」
出典:青空文庫