・・・いわばあてのない人をそうして幾年も待っていても、と周囲がとやかく云いだして来ている。娘さんとしてはそれらの言葉に動かされる心持がない。母としての櫛田さんは、ぐるりの人々の親切から出る忠告をやわらかくうけながら、娘さんの一途な心をいじらしく思・・・ 宮本百合子 「その人の四年間」
・・・私は、ここでその一般論をとやかく云い度いとは思いません。斯様なことは、最も箇人的な、最も深い人生価値批判の後に解決されることと信じ問題としては各人の宿題にしたまま、先ず進みましょう。 事実として、深い意識、真面目な期待の下に生れ出た子供・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・ おのずからそこに客観的な効果は在り得るのだから、それをとやかく云うには及ばない。一行でも多く、一冊でも多く、人間の独立と、よろこび多い合理性にとんだ社会生活の建設に役立つ印刷物が出なくてはならない。人民の経済生活は極めて危機に瀕してい・・・ 宮本百合子 「「どう考えるか」に就て」
・・・だから谷崎、荷風が闇屋に読まれるということもその作家にとやかくいうべきでない社会現象であるともいえる。なぜなら、闇屋は最近の日本の破滅的な生産と経済と官僚主義の間から生えたきのこであり、谷崎、荷風はそんなきのこの生える前からそこに立っていた・・・ 宮本百合子 「文化生産者としての自覚」
・・・正直な人々は、伝統的な感情にしたがって、国家が危急に瀕しているとき、まだとやかくいっている非国民! 理窟があるならまず協力して勝ってからいうべきであるという心持だった。これは、勤労動員された女学生たちの稚い心にさえ何かのニュアンスで生きてい・・・ 宮本百合子 「平和への荷役」
・・・団結の力はどんなに強いものかということをブルジョア・地主は知っているからこそ、たとえば文化サークルのように何でもないものまで当局は、ただそれを中心に大衆が集るというだけで、もうとやかく干渉するのです。過去の経験を、現在あなたが『働く婦人』の・・・ 宮本百合子 「「我らの誌上相談」」
出典:青空文庫