・・・の準備の道程に覚束ない分厘の歩みを進めるのである。 寺田寅彦 「初冬の日記から」
・・・きで数学のきらいな学生諸君と、数学が好きで語学がきらいな学生諸君とに、その好きなものときらいなものとに存外共通な要素のある事を思いださせ、その好きなものに対する方法を利用してそのきらいなものを征服する道程を暗示したいと考えたまでであった。そ・・・ 寺田寅彦 「数学と語学」
・・・ また一方において、数学の複雑な式の開展を充分に理解しないでしかも、アインシュタインがこの理論を構成する際に歩んで来た思考上の道程を、かなりに誤らずに通覧する事も必ずしも不可能ではないのである。不可能でないのみならずある程度までのある意・・・ 寺田寅彦 「相対性原理側面観」
・・・と名づけているものが、ただ永劫な時の道程の上に孤立した一点というようなものに過ぎないであろうか。よく考えてみるとそんなに切り離して存在するものとは思われない。つまりは遠い昔から近い過去までのあらゆる出来事にそれぞれの係数を乗じて積分した総和・・・ 寺田寅彦 「小さな出来事」
・・・でもある時代におけるこうした環境条件が特に突然変異の誘発に好適であったために、特にその時代に新しい型式の生物が多数に発生したであろうということも想像できるのであるが、それと同じように文化的要素の進化の道程における突然変異もまたその時代におけ・・・ 寺田寅彦 「俳句の型式とその進化」
人間文化の進歩の道程において発明され創作されたいろいろの作品の中でも「化け物」などは最もすぐれた傑作と言わなければなるまい。化け物もやはり人間と自然の接触から生まれた正嫡子であって、その出入する世界は一面には宗教の世界・・・ 寺田寅彦 「化け物の進化」
・・・ こうした輪廻の道程がもう一歩進んで墮落と廃頽の極に達し俳句が再び「宗匠」と「床屋」の占有物となる時代が来ると、そこではじめて次の輪廻の第一歩が始まるのではないかという気もする。その前にはどうしても一度行きつくところまで行く必要があるで・・・ 寺田寅彦 「明治三十二年頃」
・・・ このような可能性への探究の第一歩を進めるための一つの手掛かりは、上記のごとき統計的質的現象の周到なる実験的研究と、それの結果の質的整理から量的決算への道程の中に拾い出されはしないであろうか。 要するに、従来のいわゆる統計物理学は物・・・ 寺田寅彦 「量的と質的と統計的と」
・・・わたくしは晩餐をすましてから、会社の人に導かれて、この公園を散歩したが、一時間あまりで帰って来たので、その道程は往復しても日本の一里を越していまいと思った。 やがて裏手の一室に這入って、寝に就いたが、わたくしは旅のつかれを知りながらなか・・・ 永井荷風 「十九の秋」
・・・停車場からこの会場までの道程も大分ある。こう申しては失礼であるが昔見た時はごくケチな所であったかのようにしか、頭に映じないのであります。それで車の上で感服したような驚いたような顔をして、きょろきょろ見廻して来ると所々の辻々に講演の看板と云い・・・ 夏目漱石 「中味と形式」
出典:青空文庫