・・・去年の春の選挙に婦人代議士がどっさり出て、そのことは、知識階級の婦人たちをかえって失望させもした。そして、その騒々しさからは幾歩か身をはなしておいて、政治的には発展せず、政治屋ふうになった一部の婦人のうごきを眺めている気分も感じられる。・・・ 宮本百合子 「明日の知性」
・・・利潤を追い求める企業としてのあらゆる性格と方法とを備えて来て、どっさりの金を出す広告は気狂いじみた権利を紙面に主張するようになった。各新聞の古風な商売仇的競争も、商品としての新聞の売行きのために激しく鼓舞され、記者たち一人一人の地位は、木鐸・・・ 宮本百合子 「明日への新聞」
・・・国民学校の教育も戸惑っている形ですし、住宅難の問題もあり、子供は可哀そうに、悪くなってゆくどっさりの条件の中に、さらされております。 こういう困難の中で、公明正大な人間を作ろうとするのは、理想論だといわれるかもしれません。しかし、子・・・ 宮本百合子 「新しい躾」
・・・私たちの生きている時代は外廓的には随分進んでいるから、女のおくれている面で食っている女というものもどっさり出て来ている。真に女の生活のひろがりのため、高まりのため、世の中に一つの美をももたらそうという念願からでなく、例えば女らしさを喰いもの・・・ 宮本百合子 「新しい船出」
・・・わたしの偶然は、そういう家庭の条件と結びついたのだったが、ほかのどっさりの人々の偶然は、どこでどんな条件と結び合うのだろう。 マクシム・ゴーリキイの「幼年時代」は、幼年時代について書かれた世界の文学のなかで独特な価値をもっている。あれを・・・ 宮本百合子 「新しい文学の誕生」
・・・ 戦争中の日本政府のとりしまりは法外に苛酷非条理であったから、ツルゲネフやマクシム・ゴーリキイについて書かれた文章は、これまで、どっさり伏字があった。それらの伏字はこんどすっかり埋められた。その点から云えば、これらの文章も今度はじめて本・・・ 宮本百合子 「あとがき(『作家と作品』)」
・・・拘禁生活をさせられていた人々ばかりでなく、どっさりの人は戦地におくられて、通信の自由でなかった家郷の愛するものの生死からひきはなされて、自分たちの生命の明日を知らされなかった。 きょう読みかえしてみると、日本の戦争進行の程度につれて・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第五巻)」
・・・そして、作者はソヴェト同盟の生活をどっさり紹介しているからソヴェト小説を、とうけもたされた。『改造』に半年ほど連載して中絶した。検挙という外部からの理由でなしに中断した唯一の作品である。 いま考えれば、作者によって、あれだけ多量・広汎に・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十巻)」
・・・ライプツィッヒで出版されたその本には、古代ペルシアの美しいタイルの色刷りや小画の原色版がどっさり入っていた。そのミニェチュアの央に、特に色彩の見事な数枚があって、それは英雄ルスタムとその息子スーラーブの物語を描いたものだった。 ミニェチ・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第二巻)」
・・・イギリスにも子供はどっさりいた。だけれども、ほんとにまじりけない生きているよろこびでピチピチしている子供ら、新しい世代として成長しつつある子供らの新鮮で、こだわりなくて、そしてよその国のどこにもない社会的な保護のもとに小さな人々として生きつ・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第八巻)」
出典:青空文庫