・・・「ブルジョア法律は、認定で送れるんだからね、謂わば君が承認するしないは問題じゃないんだ」「そう云うのなら仕方がない」 自分は云うのであった。「事実がないからないと云って、それが通用しないのなら、出鱈目を云っている人間と突合わ・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・人民生活に砂糖の消費が制限されるようになって来て、遂に全く砂糖なしになって来た頃、いろいろな栄養学者、医者たちは、あれほど口と筆との力をそろえて、砂糖が人体に及ぼす害について宣伝した。砂糖は骨格をよわくする。砂糖は血液を酸化させる。砂糖は人・・・ 宮本百合子 「砂糖・健忘症」
・・・若し現今、男性の社会生活が認定して居る或権利でも、其の価値が低級である場合には、其の存在を否定する丈の見識がなければなりません。 私共は落付いて、真剣に、人格的自由と云う事を考えなければなるまいと存じます。教養のない者の破廉恥は、教養あ・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・ 第二は、可なり朦朧とした Creature と Beings の説明で、第三から人体、衣食住に関する常識以下、博物、地文、産業、経済、物理、生理にまできっちり七行ずつ、触れている。そして最後は上帝への礼拝で終っている。 ほんの七行・・・ 宮本百合子 「蠹魚」
・・・高速度カメラが夢中で疾走する人体の腿の筋肉をも見せる力をもっているように、こうして動きつつ、動かしつつ、動かされてもいる私たちの生活図を、野放図な刷毛使いでげてもの趣味に描くのではなく、作家自身の内外なる歴史性への感覚をも、活々と相連関する・・・ 宮本百合子 「人生の共感」
・・・五六人の男の踊り手が、黒い装で、ちょんびり人体力学の真似をやる。 が、諸君、おどろくな。この最後の一幕を通じて、凡そ二百人ばかりの、白いシャツを着た大群集が順ぐり高さの違う台の上にキレイに立ち並ばせられたまま、滝が落ちようが、石油が燃え・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・被告たちが、新刑事訴訟法について知らず、認定でやってやるという検事の言葉におびえたわけもわかる。 第一回の公判廷において、被告とともに公訴とりさげを主張し、あるいは、法の公正と人権擁護のために立ったのは、自由法曹団の弁護人ばかりではなか・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
・・・ 故にこれで明らかなように人体の美も、社会主義の社会において始めて曇りなく描きたたえ得るものなのである。男の美を描き得るためには女は先ず性的奴隷の鎖を切らねばならぬ。 性的交渉の苦々しさを知らぬ女として生活し得る社会になってこそ、そ・・・ 宮本百合子 「婦人作家は何故道徳家か? そして何故男の美が描けぬか?」
・・・大きい円い奴をふっ飛ばして一つの跳躍する球が人体集団をいかに制約するか、金を儲けて見物する。しゃれたチョッキで見事な馬にのって球のかっ飛しっこをする。――いろんな道具でいろんな工合に球をころがして遊んでるうちに英国人に地球までがあしらい切れ・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
・・・カロリーということがいわれて、何の総熱量は何と何との総熱量と同量であるから、これとあれとは人体に同じ作用をおよぼす、というようによく新聞などに出るけれど、科学の進歩は私たちにカロリーとともに、そのカロリーをつくるエレメントのことを教えている・・・ 宮本百合子 「私の感想」
出典:青空文庫