・・・先の親方時代からの縁故で、大工、植木などの職人は勿論、井戸替、溝掃除、細々した人夫の需要も石川一手に注文が集った。纏った建築が年に幾つかある合間を、暇すぎることもなく十五年近く住みついているのであった。 五年前、桜が咲きかける時分石川は・・・ 宮本百合子 「牡丹」
・・・暫くすると、今度は荷車人夫と一緒にやって来て、料理女の足の方と頭の方に手をかけ、往来へ運び出して行った。「ペシコフ、床を拭いて置きなよ!」 主人が命令した。「夕方死んでくれて、まあ助かった……」 どうして夕方死んだからいいの・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・ 村を出てからゴーリキイは裏海の漁業組合で働き、やがてドウブリンク駅の番人として働き、駅夫や人夫に地理や天文の本をよんで聞かせてやりながら、半分歩いてニージュニイにたどり着いた。その時分ロシアの辺鄙な田舎の果でもツァーの官吏や司祭らが、・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの人及び芸術」
出典:青空文庫