・・・「しこん、しこんと。はてな聞いたようなことだがどうもよくわかりません。やはり知らないのですな。」みんなはがっかりしてしまいました。なんだ、紫紺のことも知らない山男など一向用はないこんなやつに酒を呑ませたりしてつまらないことをした。もうあ・・・ 宮沢賢治 「紫紺染について」
・・・じゃ僕もう失礼します。はてな、何か云い残したことがあるようだ。」「お星さまのいろのことですわ。」「ああそうそう、だけどそれは今度にしましょう。僕あんまり永くお邪魔しちゃいけないから。」「あら、いいんですよ。」「僕又来ますから・・・ 宮沢賢治 「土神ときつね」
・・・それよりは、その、精神的に眼をつむって観念するのがいいでしょう、わがこの恐れるところの死なるものは、そもそも何であるか、その本質はいかん、生死巌頭に立って、おかしいぞ、はてな、おかしい、はて、これはいかん、あいた、いた、いた、いた、いた、」・・・ 宮沢賢治 「楢ノ木大学士の野宿」
・・・「おやおやみんな改宗しましたね、あんまりあっけない、おや椅子も丁度いい、はてな一つあいてる、そうだ、さっきのヒルガードに似た人だけまだ頑張ってる。」 なるほどさっきのおしまいの喜劇役者に肖た人はたった一人異教徒席に座って腕を組んだり・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・酒はどうかと云うと、厭ではないと云います。はてなと思って好く聞いて見ると、飲んでも二三杯だと云うのですから、まさか肝臓に変化を来す程のこともないだろうと思います。栄養は中等です。悪性腫瘍らしい処は少しもありません」「ふん。とにかく見よう・・・ 森鴎外 「カズイスチカ」
・・・「随分己もお前も方々歩いて見たじゃないか」「ええ。それは歩くには歩きましたが」と云い掛けて、宇平は黙った。「はてな。歩くには歩いたが、何が悪かったと云うのか。構わんから言え」 宇平はやはり黙って、叔父の顔をじっと見ていたが、・・・ 森鴎外 「護持院原の敵討」
・・・「何だい。僕はまだ来たばかりで、なんにも知らないんだから、どしどし注意を与えてくれ給え。」「実は僕の内の縁がわからは、君の内の門が見えるので、妻の奴が妙な事を発見したというのだ。」「はてな。」「君が毎日出勤すると、あの門から・・・ 森鴎外 「鶏」
・・・「はてな。工面が悪いのかしら。」独言のように私は云った。「そうじゃございません。お泊になってから少し立ちますと、今なら金があるからと仰ゃって、今月末までの勘定を済ませておしまいになった位でございます。」もう十一月に入っているから、F・・・ 森鴎外 「二人の友」
・・・男。はてな。それではそのお話がわたくしの身の上に関係した事なのですか。貴夫人 大いに関係していますの。男。どうもちっとも思い当る事がありませんね。貴夫人。それは思い出させてお上げ申しますわ。ですけれど内証のお話で・・・ 著:モルナールフェレンツ 訳:森鴎外 「辻馬車」
・・・ハッと思うと、私の身体はまん円い物の上へどしゃりッと落ったのだ。はてな―ふわふわする。何ァんだ。他愛もない地球であった。私は地球を胸に抱きかかえて大笑いをしているのである。 まごついた夢 歩こうとするのに足がどちらへで・・・ 横光利一 「夢もろもろ」
出典:青空文庫