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・・・そしてその欲動のゆえに自己を悲観し自己を鞭うつ。 私の考えでは、私の夢想するファウストは私の愛がゾシマのように深くならなくてはとても書けそうにない。今の私の愛は愛と呼ぶにはあまりに弱い。私はまだ愛するものの罪を完全には許し得ないのである・・・
和辻哲郎
「生きること作ること」
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・・・ かくのごとく一二の例外を除いて現代の道徳はすべて混沌、すべて闇濁、最も悲観すべき半面を有す。文明の発達に従いて肉の欲望はますます大となり、虚栄の渇仰はいよいよ強となる。吾人は浅薄なる皮相の下に真精神を発見したい。時代思潮に革命を起こし・・・
和辻哲郎
「霊的本能主義」