・・・にしろ、ロマンティックな父親の親友の出現ややがては良人となった富貴な保護者の出現で、物語の境遇が変化させられ、ハッピー・エンドになっていて、女主人公たちの内的成長は、始まりから終りまで云わば性格的なもの、気質的なものの範囲から出ていないので・・・ 宮本百合子 「若き精神の成長を描く文学」
・・・ こういう物質的な女性生活の富貴は、しかし立入って見れば彼女達の曇りない幸福を証明するものではなかった。この時代に日本の一般社会には女性に対する支那伝来の厳しい女訓が流布して、貝原益軒の女大学などが出た時期であった。どんなに美事に着飾ろ・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・そして、その感情生活も性格から来る不羈奔放さとともに、専制的な君主らしく一人よがりで気ままであったこと、伝説化されている淀君のような存在もあり、一方には千利休の娘に対する醜聞なども伝えられている。 当時の社会では、征服した者が権力を以て・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・ 香以伝の末にわたくしは芥川龍之介さんが、香以の族人だと云うことを附記した。幸に芥川氏はわたくしに書を寄せ、またわたくしを来訪してくれた。これは本初対面の客ではない。打絶えていただけの事である。 芥川氏のいわく。香以には姉があった。・・・ 森鴎外 「細木香以」
・・・付記。この文章は十七年前に書かれたものであるが、その後の年月はこの文章の誤謬をはっきりと示している。木下は確乎としたフマニストであって享楽人ではない。 和辻哲郎 「享楽人」
・・・そういうことから私たちは漱石が権門富貴に近づくことをいさぎよしとしない人であるように思い込んでいた。またそれが私たちにとって漱石の魅力の一つであった。しかし漱石は、いつだったかそういうことが話題になったときに、次のような意味のことを言った。・・・ 和辻哲郎 「漱石の人物」
・・・そういうことから私たちは漱石が権門富貴に近づくことをいさぎよしとしない人であるように思い込んでいた。またそれが私たちにとって漱石の魅力の一つであった。しかし漱石は、いつだったかそういうことが話題になったときに、次のような意味のことを言った。・・・ 和辻哲郎 「漱石の人物」
野上豊一郎君の『能面』がいよいよ出版されることになった。昨年『面とペルソナ』を書いた時にはすぐにも刊行されそうな話だったので、「近刊」として付記しておいたが、それからもう一年以上になる。網目版の校正にそれほど念を入れていたのである。そ・・・ 和辻哲郎 「能面の様式」
・・・付記。能面についての具体的なことは近刊野上豊一郎氏編の『能面』を見られたい。氏は能面の理解と研究において現代の第一人者である。 和辻哲郎 「面とペルソナ」
出典:青空文庫