・・・ 最後に、末筆で失礼であるが、私は、学生時代、先生にひどいお世話になったことを、附記しておかねばならぬ。そうしてそれは、いつも、私の遠い悲しい思い出になっている。 太宰治 「豊島與志雄著『高尾ざんげ』解説」
・・・ 四 或る雑誌の座談会の速記録を読んでいたら、志賀直哉というのが、妙に私の悪口を言っていたので、さすがにむっとなり、この雑誌の先月号の小論に、附記みたいにして、こちらも大いに口汚なく言い返してやったが、あれだけで・・・ 太宰治 「如是我聞」
・・・ 附記 この時うつした写真を、あとで記者が持って来てくれた。笑い合っている写真と、それからもう一枚は、私が浮浪児たちの前にしゃがんで、ひとりの浮浪児の足をつかんでいる甚だ妙なポーズの写真であった。もしこれが後日、何か雑誌にで・・・ 太宰治 「美男子と煙草」
・・・われら巨万の富貴をのぞまず。立て札なき、たった十坪の青草原を! 性愛を恥じるな! 公園の噴水の傍のベンチに於ける、人の眼恥じざる清潔の抱擁と、老教授R氏の閉め切りし閨の中と、その汚濁、果していずれぞや。「男の人が欲しい!」「・・・ 太宰治 「HUMAN LOST」
・・・われら巨万の富貴をのぞまず。立て札なき、たった十坪の青草原を! 性愛を恥じるな! 公園の噴水の傍のベンチに於ける、人の眼恥じざる清潔の抱擁と、老教授R氏の閉め切りし閨の中と、その汚濁、果していずれぞや。「男の人が欲しい!」「・・・ 太宰治 「HUMAN LOST」
・・・たるや、みだりに重宝珍器を羅列して豪奢を誇るの顰に傚わず、閑雅の草庵に席を設けて巧みに新古精粗の器物を交置し、淳朴を旨とし清潔を貴び能く礼譲の道を修め、主客応酬の式頗る簡易にしてしかもなお雅致を存し、富貴も驕奢に流れず貧賤も鄙陋に陥らず、お・・・ 太宰治 「不審庵」
・・・たるや、みだりに重宝珍器を羅列して豪奢を誇るの顰に傚わず、閑雅の草庵に席を設けて巧みに新古精粗の器物を交置し、淳朴を旨とし清潔を貴び能く礼譲の道を修め、主客応酬の式頗る簡易にしてしかもなお雅致を存し、富貴も驕奢に流れず貧賤も鄙陋に陥らず、お・・・ 太宰治 「不審庵」
・・・あとで、いざこざの起らぬよう、それだけを附記する。 かきならす。おとをだに聞かば。このさとに。わがすむことを。きみや知るらむ。 太宰治 「盲人独笑」
・・・かれが天稟の楽人ならば、われも不羈の作家である。七百頁の「葛原勾当日記」のわずかに四十分の一、青春二十六歳、多感の一年間だけを、抜き書きした形であるが、内容に於て、四十余年間の日記の全生命を伝え得たつもりである。無礼千万ながら、私がそのよう・・・ 太宰治 「盲人独笑」
・・・ 附記。これは、半ば以上、私の本の、広告のために書いた。私、昭和十一年よりは、稿料、全く無しか、さもなくば、小説一枚五円、その他のくさぐさの文章一枚三円ときめた。 今年正月号には、私の血一滴まじって居るとさえ思わせたる編輯者・・・ 太宰治 「もの思う葦」
出典:青空文庫