・・・ その時六、七名から十二名におよぶ女子供を銃殺した人達が復員しているという記事が問題となっていました。その中の一人である教員が、もしあの当時、“降伏”という言葉が日本にあったならば、ああいうことを誰がしたろうと語っていました。 日本・・・ 宮本百合子 「講和問題について」
・・・、「青い鳥」だの「神霊に感じた民主主義」だのとMRAをかついでうろつくまでもなく、もう怠りなくリ・アーマメント=再武装は実行している。国内に五十万の顎紐をかけた警官と二百万の「消防」、復員軍人、旧戦犯、悪質の「民同」がうようよしていて、「高・・・ 宮本百合子 「再武装するのはなにか」
・・・ 私どもは、何々という島では、兵士の何割が栄養失調で餓死したという報告を、やつれ果てた復員兵から告げられている。一方に、大小の戦争犯罪人としての将官が、リストされている。しかし、兵と共に飢えて死んだという将校が、何人私たちに知られている・・・ 宮本百合子 「逆立ちの公・私」
・・・が、そこに一つも平和への誠意がないことを批判されつつ特に九州や東北の農村でひろくよまれているし、ソ同盟からの復員者たちは、船から上陸する前に、まず、次の戦争への挑発にあっている。人民生活の収奪のひどさに苦しむ一般の感情に乗じて、きょうの日本・・・ 宮本百合子 「作家は戦争挑発とたたかう」
・・・「失業と多産のためにほとんど飢餓にひんしているこの階級の親たちにとっては全く天来の福音である」と新聞の記事はかきたてている。 プロレタリアートの姉妹たち! われわれはこの記事から、プロレタリアの女として、どんな「天来の福音」を感じる・・・ 宮本百合子 「「市の無料産院」と「身の上相談」」
・・・戦災者、復員者、引揚者みんな困窮している人々は六年を終った子供を生計のための助手にしなければやりきれない場合が多い。工場へなり給仕になり店員になりやってせめて喰べるものだけは、何とかして雇主にもって貰いたいという非常に切迫した要求がある。現・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」
・・・夥しい引揚者と復員者。六〇万人以上の未亡人と一二万人の孤児と六〇万の戦争による不具者とが生じたのであった。 第二次世界大戦の間じゅう、他の諸国ではその恐しい戦争の底を縫って、国際的な友交が保たれていた。ナチス占領下のフランスで、フランス・・・ 宮本百合子 「それらの国々でも」
・・・公平な立場から書かれた歴史を読むと、私共はシャヴィエル、ワリニヤニ等初期の師父――伴天連達が、神の福音をつげるに勇ましかったと同時、なかなか実際処世上の手腕をも具備していたことをしる。当時、その師父等と交誼のあった日本の君子等は、勿論知識と・・・ 宮本百合子 「長崎の印象」
・・・どっさりの勤労経験を与えられた学生、復員学生がある。生死を賭して、若い命を最も真面目な経験にさらして帰った学生はおびただしい。これらの青年が、自分たちの経験から新しい日本の建設について本気に考えているのは当然である。今日学生の本分が、教室で・・・ 宮本百合子 「メーデーぎらい」
・・・四面海に囲まれた日本が、動く船として残しもった頓数は、海外にのこされた在留民・復員兵士の輸送にも事欠くばかりに僅かである。 統計で見れば、平面的に見られる家屋の全焼全壊の指数、半焼半壊の指数を、生活の現実の中で、具体的に、即物的に数え直・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫