・・・ と、仲間の一人が、ふざけるような様子をして頭を擡げ、眩しい眼をしばたたきながら、フト自分等の上に来かかる子供を見上げた。「オヤ、まあ」 サヤサヤ、サヤサヤ……葉どもは一斉に身をそらせて彼を見る。「アラ、人間の子よ」「ま・・・ 宮本百合子 「禰宜様宮田」
・・・悪魔が屋根からもんどりうって飛ぶ様子を想像して、ゴーリキイが笑うと、祖母も笑い出し、「悪魔はふざけるのが好きだからなあ。全く小ちゃな子供のようさ」 家から火事が出かかった時、火の子のように活動してそれを消しとめたのはこの祖母さんであ・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・祖母にはそれがつくづくおかしかったと見え、ふざけることの下手な正直者であったが、切下髪を動して「ハイ、そうであります」という口真似から身ぶりまで実に堂に入っていて、私は大よろこびしたものである。 やがてゴリゴリする白縮緬の兵児帯などを袴・・・ 宮本百合子 「明治のランプ」
出典:青空文庫