・・・ 日本の女性が、両性の友情の間で紛糾を生じがちなのは、我知らずそこに、自分たち日常の現実にあらわれている関係のきまった男との間に在るいきさつとは異った気分、より圧迫の少い、女としてより負担と責任との軽い、それゆえより人間として自分を溌剌・・・ 宮本百合子 「異性の友情」
・・・となった山間のK部落の自作農らが、更に戦争の軍事費負担を加重される。軍部がその部落に二百円の強制献金を割り当てた。自作農らはついに共同墓地の松の木を伐ってそれを出すことに決議したが、昭和二年の鉱山閉鎖以来共同植付苅入れをしている「やま連」と・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・用しており、それから夫婦関係の、記録なんかでは、とてもわからないいろいろの経緯がからみ、三人の子供が首枷になっているという女の非常に憎悪の気持、子供を憎む気持が非常にあるということ、ある境遇には非常に負担に思って亭主のお蔭でこういう目に遭う・・・ 宮本百合子 「浦和充子の事件に関して」
・・・などでも、この社会で受身な負担のにない手である女の苦しい感情が母性愛といういろどりで描かれている。こういう映画が外国でも人々の涙を誘うのであって見れば、そこでも女の生活は、恋愛の面においてもいろいろの苦しいものを持っていることが察せられる。・・・ 宮本百合子 「映画の恋愛」
・・・日本文化の一つの負担として注意をひかれているのである。 漱石のように生き、生涯を終った作家の周囲では、先輩の弟子たち、親友たちが、没後何とはなし家長的位置におかれる。伯林の国立銀行の広間の人ごみの間で、私は不図自分にそそがれている視線を・・・ 宮本百合子 「鴎外・漱石・藤村など」
・・・ 性慾は、本来に於て、厳粛な責任と、反省と、義務とを負担し伴ったものであると思う。故に、その純粋な場合には必ず其等の一面も影となって人の意識にのぼって来る。 此点から云うと、性慾生活に於て、或は生理的な条件から其等責任感を、本能的に・・・ 宮本百合子 「黄銅時代の為」
・・・一人一人の財布ではもう背負い切れない負担である「わたくしの方法」買出しに打開策をまかせてみたり、又おどろいてやめさせたりばかりしているのでしょう。 真に公の声である全日本の人々の、生きて働けるだけ食べられるように、という声に心を合わせて・・・ 宮本百合子 「公のことと私のこと」
・・・そういう愛情は日本の社会でいわば公認の愛の局面であるが、自分に向けられる母の愛、気づかい、心配などを、有難いとともに漠然負担に感じないで暮している娘さんたちが今日はたして何人あるだろうか。日本の女の自己犠牲の深さということを一方においてみる・・・ 宮本百合子 「女の自分」
・・・そういう経験をもっていて労働者農民の国ソヴェト同盟の暮しを見たのだから、プロレタリアートの国ソヴェト同盟では、国庫全額負担の失業手当があり、養老保険があり、小学校から大学まで労働者にとっては無料であると語る時、なみなみでない情熱が感じられ、・・・ 宮本百合子 「共産党公判を傍聴して」
・・・きのジュヌヴィエヴの回想として、そういう形での抗議が真の抗議の意味をもたないということを語らせているし、同時に彼女の親友ジゼルの批判として、子供だけもって結婚はしないというような「女にとってあとあとの負担の非常に多いそんなやりかたを承知する・・・ 宮本百合子 「結婚論の性格」
出典:青空文庫