・・・世間或は之を見て婦人の嫉妬など言う者もあらんなれども、凡俗の評論取るに足らず、男子の獣行を恣にせしむるは男子その者の罪に止まらず、延いて一家の不和不味と為り、兄弟姉妹相互の隔意と為り、其獣行翁の死後には単に子孫に病質を遺して其身体を虚弱なら・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
・・・ 口取りと酢のもの 今日始めて私はいかにもこの上ないほど不味不味しいそして妙な膳のこしらえ方を見た。 光線のろくに入らない台所でゴトゴトと料理して居た料理人は朱塗の膳に口取りと酢のものと汁をのせて客室に運んだ。・・・ 宮本百合子 「旅へ出て」
・・・そこで水瓜をたべ、引茶氷というの、お文公の発起でとったが、この引茶は不味。半分もたべなかった。それから角の本やによって、第一書房のをとって、来月の『アララギ』を一冊とらせる注文をして、玉川電車にのりました。暑く、汗が出る、出る。水瓜の汗故、・・・ 宮本百合子 「日記・書簡」
・・・をあらまし話して仕舞うと、次に話す事を考えでもする様に、体に合わせて何だか小さい様に見える頭を下げて、前歯で「きせる」を不味そうにカシカシかみながら、黙り込んで居る。 百姓などで、東京のものの様に次から次へと考えずに話をするものが有った・・・ 宮本百合子 「農村」
出典:青空文庫