・・・と、いって、お姉さんは、良ちゃんのほっぺたをぷっと吹きました。 良ちゃんは、心持ち顔を赤くして、「じゃ、みんなとなら、ペンシルと代えてくれる?」と、熱心にいいました。 お姉さんは、かわいそうになりました。「私、今日、デパート・・・ 小川未明 「小さな弟、良ちゃん」
・・・おれはぷっと噴きだし、折角こっちが勿体ぶっているのに、鉢巻とはあんまり軽々し過ぎる、だいいち帷子との釣合いがとれないではないかと、これはすぐやめさせた。 面白いほどはやり、婆さんははばかりに立つ暇もないとこぼしたので、儲けの分を増してや・・・ 織田作之助 「勧善懲悪」
・・・とお辞儀して、どうにも甘えた気持になり、両手そろえてお辞儀しながら、ぷっと噴き出す仕末であった。 老母は、平気で、「はい、こんばんは。朝太郎、お世話になります。」と挨拶かえして、これものんきな笑顔である。 不思議な蘇生の場面であ・・・ 太宰治 「火の鳥」
・・・絶えず、ちらちらと三浦君のほうを見ては、ぷっと噴き出しそうになって、あわてて窓の外を眺めて、笑いをごまかしている。松の並木道。坂道。バスは走る。 船津。湖水の岸に、バスはとまった。律子は土地の乗客たちに軽くお辞儀をして、静かに降りた。三・・・ 太宰治 「律子と貞子」
・・・ラプンツェルは、なぜだか急に可笑しくなって、ぷっと噴き出しました。「何。どうしたの?」と王子は、ラプンツェルの顔を覗き込んで尋ねました。「何が可笑しいの?」「ごめんなさい。あなたが、へんに真面目なので、つい笑っちゃったの。あたしが今・・・ 太宰治 「ろまん燈籠」
・・・k system of observation. For example, the reception of observation data from ships at sea was first put into practice up・・・ 寺田寅彦 「PROFESSOR TAKEMATU OKADA」
・・・タネリは、柔らかに噛んだ藤蔓を、いきなりぷっと吐いてしまって、こんどは力いっぱい叫びました。「ほう、太陽の、きものをそらで編んでるぞ いや、太陽の、きものを編んでいるだけでない。 そんなら西のゴスケ風だか? いいや、西風ゴス・・・ 宮沢賢治 「タネリはたしかにいちにち噛んでいたようだった」
・・・(第一おら、下座だちゅうはずぁあんまい、ふん、お椀のふぢぁ欠げでる、油煙はばやばや、さがなの眼玉は白くてぎろぎろ、誰っても盃よごさないえい糞とうとう小吉がぷっと座を立ちました。 平右衛門が、「待て、待て、小吉。もう一杯やれ、待てった・・・ 宮沢賢治 「とっこべとら子」
・・・支那人はもうひとりでかぷっと呑んでしまいました。 山男はほんとうに呑んでいいだろうかとあたりを見ますと、じぶんはいつか町の中でなく、空のように碧いひろい野原のまんなかに、眼のふちの赤い支那人とたった二人、荷物を間に置いて向かいあって立っ・・・ 宮沢賢治 「山男の四月」
出典:青空文庫