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・・・「絵葉書に針でもってぷつぷつ穴をあけて、ランプの光に透かしてみると、その絵葉書の洋館や森や軍艦に、きれいなイルミネエションがついて、――あれを思い出さない?」「僕は、こんなけしき、」私は、わざと感覚の鈍い言いかたをする。「幻燈で見たこと・・・
太宰治
「秋風記」
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・・・ 私どもははじめまるで死んだようになっていましたがだんだん近くなって見ますとその役人の顔はまっ赤でまるで湯気が出るばかり殊に鼻からはぷつぷつ油汗が出ていましたので何だか急にこわくなくなりました。「あっちからです。」私はみちの方を指し・・・
宮沢賢治
「二人の役人」