・・・面積一万五千平方マイルのデンマークにとりましては三千平方マイルの曠野は過大の廃物であります。これを化して良田沃野となして、外に失いしところのものを内にありて償わんとするのがそれがダルガスの夢であったのであります。しかしてこの夢を実現するにあ・・・ 内村鑑三 「デンマルク国の話」
・・・江の島の橋のたもとに、新宿へ三十分、渋谷へ三十八分と、一字一字二尺平方くらいの大きさで書かれて居る私設電車の絵看板、ちらと見て、さっさと橋をわたりはじめた。からころと駒下駄の音が私を追いかけ、私のすぐ背後まで来てから、ゆっくりあるいて、あた・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・鶴を読め、鶴を読めと激しい語句をいっぱい刷り込んだ五寸平方ほどのビラを、糊のたっぷりはいったバケツと一緒に両手で抱え、わかい天才は街の隅々まで駈けずり廻った。 そんな訳ゆえ、彼はその翌日から町中のひとたちと知合いになってしまったのに何の・・・ 太宰治 「猿面冠者」
・・・頼光をはじめ、鎮西八郎、悪源太義平などの武勇に就いては知らぬ人も無いだろうが、あの、八幡太郎義家でも、その風流、人徳、兵法に於いて優れていたばかりでなく、やはり男一匹として腕に覚えがあったから、弓馬の神としてあがめられているのである。弓は天・・・ 太宰治 「花吹雪」
・・・兵法 文章の中の、ここの箇所は切り捨てたらよいものか、それとも、このままのほうがよいものか、途方にくれた場合には、必ずその箇所を切り捨てなければいけない。いわんや、その箇所に何か書き加えるなど、もってのほかというべきであろう・・・ 太宰治 「もの思う葦」
・・・ そんな事はどうでもよいが、私の眼についたのは、この灰色の四十平方寸ばかりの面積の上に不規則に散在しているさまざまの斑点であった。 先ず一番に気の付くのは赤や青や紫や美しい色彩を帯びた斑点である。大きいのでせいぜい二、三分四方、小さ・・・ 寺田寅彦 「浅草紙」
・・・ 二 二千年前に電波通信法があった話 欧洲大戦の正に酣なる頃、アメリカのイリノイス大学の先生方が寄り集まって古代ギリシアの兵法書の翻訳を始めた。その訳は、人間の頭で考え得られる大概の事は昔のギリシア人が考えてしまっ・・・ 寺田寅彦 「変った話」
・・・面積一平方ミリに一語くらいの勘定になるようである。日本でも米粒の表面に和歌を書く人があるが、これに匹敵する程度の細字と思われる。聞くところによると、米粒へ文字を書くには、米粒を手のひらへのせて、毎日暇さえあればしみじみとながめている、すると・・・ 寺田寅彦 「記録狂時代」
・・・しかれども毎平方里における雨量の異同を予言するがごときは望み難かるべし。 地震の場合においては、いまだ気象要素に相当すべき条件さえ明白ならず。従って解析的の方法を取るべき材料いまだ具備せず。これらが一通り具備したる暁においても、現象の偶・・・ 寺田寅彦 「自然現象の予報」
・・・ 病気にさわる事を恐れて初めの日は三尺平方ぐらいにしてやめた。昼過ぎに行って見ると、刈られた葉はすっかりかわき上がって、青白い干し草になって散らばっていた。日向にさらされたままの鋏の刃はさわって見ると暑いほどにほてっていた。 学・・・ 寺田寅彦 「芝刈り」
出典:青空文庫