・・・ 五 昨夜古いギリシアの兵法書を読んでいたら「夜打ちをかける心得」を説いたくだりに、狗吠や鶏鳴を防止するためにこれらの動物のからだのある部分を焼くべしということが書いてある。お灸でもすえるのかと思う。この本の脚注に、・・・ 寺田寅彦 「俳諧瑣談」
・・・一つは自分の縄張うちへ這入って来て、似寄った武器と、同種の兵法剣術で競争をやる。元来競争となるとたいていの場合は同種同類に限るようです。同種同類でないと、本当の比較ができないからでもあるし、ひとつ、あいつを乗り越してやろうと云う時は、裏道が・・・ 夏目漱石 「文壇の趨勢」
・・・ある時代のロシアの魂、その魂は、ロシアばかりにしかなくて、ロシア生活の根で二千百三十五万二千平方粁の上に発生する感情と智慧はそれから翔び去れないところの魂のある姿なのだ。そうでないとしたら、社会主義者で芸術家である秋田雨雀さんが、大劇場の桜・・・ 宮本百合子 「シナーニ書店のベンチ」
・・・ 文学の古典研究の陣立てに、こういう兵法のようなものを思い泛ばせるというのは、評論家である保田氏として誇るに足ることであるだろうか。 二三年前、文学における古典の摂取が云われはじめた時分は、プロレタリア文学運動の退潮を余儀なくさせた・・・ 宮本百合子 「文学上の復古的提唱に対して」
・・・、「ウクライナとシベリア間数千マイル平方の土地を、ほのおに包まなくてはならない。」と提言しているのである。この委員会は、細菌兵器も禁止すべきではないとしている。味方の手には、あらゆる殺戮の武器を与えようとするこの種の平和運動者を指弾するらい・・・ 宮本百合子 「平和の願いは厳粛である」
・・・ナポレオン戦史講義 騎兵の操兵法チェスのようにして そういう日課が習慣となって来た、 p.91―若い少尉のあらゆる感覚が鈍って来た ○ ――殆ど自分自身に対しても深いケンオを抱くようになっ・・・ 宮本百合子 「「緑の騎士」ノート」
・・・こうして自敬の念に基づく心構えが、やがて武道とか男の道とかの主要な内容になってくると、争闘の技術としての武道の意味はむしろ「兵法」という言葉によって現わされるようになっている。そこで、武道、男の道、武士の道などと言われるものは、自敬の立場に・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫