・・・「いかがですか。こちらの方では大学校へ進む生徒は、ずいぶん沢山ございますか。」 校長さんが得意そうにまるで見当違いの上の方を見ながら答えました。「へい。実は本年は不思議に実業志望が多ございまして、十三人の卒業生中、十二人まで郷里・・・ 宮沢賢治 「茨海小学校」
・・・「もう少し急げませんか。私らも、もう一時間半のうちにおうちへ帰らないといけないんだから。けれども苦しいんですか。大変痛みますか。」とポウセ童子が申しました。「へい。も少しでございます。どうかお慈悲でございます。」と蠍が泣きました。・・・ 宮沢賢治 「双子の星」
・・・「よろしい、わかった。」とネネムは云いました。「姓名年齢その通りに相違ないか。」「へい。その通りです。」「その方はアツレキ三十一年七月一日夜、アフリカ、コンゴオの林中空地に於て、故なくして擅に出現、折柄月明によって歌舞、歓を・・・ 宮沢賢治 「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」
・・・「さあ、そんなものは、あの魚屋には居なかったようだぜ。もっとも章魚はあったがなあ。あの章魚の脚つきはよかったなあ。」「へい。そんないい章魚かい。わしも章魚は大すきでな。」「うん、誰だって章魚のきらいな人はない。あれを嫌いなくらい・・・ 宮沢賢治 「山男の四月」
出典:青空文庫