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・・・同時にまた脚は――と言うよりもズボンはちょうどゴム風船のしなびたようにへなへなと床の上へ下りた。「よろしい。よろしい。どうにかして上げますから。」 年とった支那人はこう言った後、まだ余憤の消えないように若い下役へ話しかけた。「こ・・・
芥川竜之介
「馬の脚」
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・・・体がへなへなとして見える。大勢はそこここから仮声を出して揶揄おうとする。こういう果敢ない態度が酷く太十の心を惹いた。大勢はまだ暫くがやがやとして居たが一人の手から白紙に包んだ纏頭が其かしらの婆さんの手に移された。瞽女は泊めた家への謝儀として・・・
長塚節
「太十と其犬」