・・・その影響で、ぼくは別荘の坊ちゃんとしての我儘なしたいほうだいを止めて、執偏奇的な宗教家、神秘家になりました。ぼくは現実に神をみたのです。一方、豆本熱は病こうこうに入って、蒐集した長篇講談はぼくの背を越しました。作文の時間には指名されて朗読し・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・それはソヴェトの五ヵ年計画と――刻々に前進する社会主義の社会の現実とメイエルホリドが独特性としている芸術理解の特色=極端な様式化と構成派風な偏奇さ、誇張、一種の病的さなどが労働と互にどういう関係において発展してゆくかという問題だ。 生産・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・的環境に止められて、僅かな感情冒険だの偏奇の誇張などにエネルギーをついやしている時、少くとも現在民主的作家は、政治的活動の分野を解放されているし、経営内の文化活動に直接ふれることができるし、労働者・農民の闘いに観察者であるばかりでなく、協力・・・ 宮本百合子 「討論に即しての感想」
・・・身は偏奇館、あるいは葷斎堂に住して、病を愛撫し、「身を落す」自傷を愛撫し、しかしそれらを愛撫するわが芸術家魂というものをひたすらに愛撫する荷風は、ある意味では人生に対する最もエゴイスティックな趣味家ではあるまいか。 ヨーロッパの婦人の社・・・ 宮本百合子 「歴史の落穂」
出典:青空文庫