・・・うんと陳腐な所謂変態心理と性慾を、最も拙劣な筋書きで見せてる。 ――レヴューは? ――ソヴェト式レヴューがあるよ。 ――オペレットは? ――ある。でも、やっぱりソヴェト式だ。 ――……ついでだから、どうだい一つ見て来た芝・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・深尾氏はお定が変態的であると評されている点が決して変態的でないと主張しておられるのであるが、私が膝を叩いて感じいったことは、私はお定のようになりたくってねえと云わしめた言葉の根底には、世間の大部分の男は「お定の対手になって見たかったと云って・・・ 宮本百合子 「もう少しの親切を」
・・・彼らはただドストイェフスキイに変態心理の作家を見るにとどまるだろう。彼が著しく「神」のことに執着する所などはほとんど無意味に感ぜられるに相違ない。しかし実際はこの作家ほど深く確実に人間のあらゆる性情をつかんでいる者は、たぐいまれなのである。・・・ 和辻哲郎 「「自然」を深めよ」
・・・という言葉で言い現わしたのは、病的、変態的、頽廃的な印象である。伎楽面的な美を標準にして見れば、能面はまさにこのような印象を与えるのである。この点については自分は今でも異存がない。 しかし能面は伎楽面と様式を異にする。能面の美を明白に見・・・ 和辻哲郎 「能面の様式」
・・・吾人の四綱領は武士道の真髄でありソシアリティの変態であろう。しかれどもこの美名の下に隠れたる「美ならざる」者ははたして存在せざるか。向陵の歴史は栄あるものであろう。しかれどもこの影に潜める悪習慣を見よ! 吾人はあえて一二の例を取る。そもそも・・・ 和辻哲郎 「霊的本能主義」
・・・は吾人の肉骸を犠牲に供す。「愛国心」はこの見地に立つ。「愛国心」は変体して忠君となった。 忠君の血を灑ぎ愛国の血を流したる旅順には凶変を象どる烏の群れが骸骨の山をめぐって飛ぶ。田吾作も八公も肉体の執着を離れて愛国の士になった。烏は績を謳・・・ 和辻哲郎 「霊的本能主義」
出典:青空文庫