・・・清と云う下総生れの頬ペタの赤い下女が俎の上で糠味噌から出し立ての細根大根を切っている。「御早よう、何はどうだ」と聞くと驚いた顔をして、襷を半分はずしながら「へえ」と云う。へえでは埓があかん。構わず飛び上って、茶の間へつかつか這入り込む。見る・・・ 夏目漱石 「琴のそら音」
・・・清と云う下総生れの頬ペタの赤い下女が俎の上で糠味噌から出し立ての細根大根を切っている。「御早よう、何はどうだ」と聞くと驚いた顔をして、襷を半分はずしながら「へえ」と云う。へえでは埓があかん。構わず飛び上って、茶の間へつかつか這入り込む。見る・・・ 夏目漱石 「琴のそら音」
・・・その縦横のクリークにはドンコがたくさんいるので、私はよく柳川でドンコ釣りをしたが、緒方一三さんというドンコ通がいて、ドンコの頬ペタのフクラミの肉は、どんな魚の味よりもおいしい、その頬のサシミを手のひらに一杯食べたら死んでもよいなどと笑って話・・・ 火野葦平 「ゲテ魚好き」
・・・その縦横のクリークにはドンコがたくさんいるので、私はよく柳川でドンコ釣りをしたが、緒方一三さんというドンコ通がいて、ドンコの頬ペタのフクラミの肉は、どんな魚の味よりもおいしい、その頬のサシミを手のひらに一杯食べたら死んでもよいなどと笑って話・・・ 火野葦平 「ゲテ魚好き」
出典:青空文庫