・・・の中に茶道礼讚として萌芽を表しているに止った。 かくて、作家は教養を求めんとして机にしばりつけられたのであったが、古典作品の鑑賞に於ては或る意味でのペダンティシズムが跳梁するばかりであるし、作品の現実はその関心の中心が益々技巧専一の職人・・・ 宮本百合子 「今日の文学の鳥瞰図」
・・・にあらわれたインテリゲンツィアとしての思想性の全くの喪失と、今日純粋小説が昔ながら通俗小説に終らざるを得ない諸事情の萌芽は、この純粋小説論にふくまれている多くの矛盾に根をおいているのである。 純文学、私小説は、その語りてである知識人の社・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・義文化そのものの中に、過去の封建的文化の残りものがあるし、本質的にブルジョア文化とわけることはできないが、さまざまの点で特徴を持っている小ブルジョア的文化があり、さらに農民の文化及びプロレタリア文化の萌芽などがふくまれているのである。同時に・・・ 宮本百合子 「今日の文化の諸問題」
・・・ 文学的新世代の萌芽 真の文学的新世代の萌芽は、そのようなむずかしく、渡るに難い文壇大路小路の地図を知らず、知ることを要しない場所に、文壇人ではない普通の人々のこの人生に対する愛と抗議とのうちにむしろ蔵されてい・・・ 宮本百合子 「十月の文芸時評」
・・・文学の生れる広い、深い歴史的な地盤としてあったから、大衆の中からの文学的萌芽というものは実に盛んに芽生えた。今日も、文学作品は非常な売行きを見せているが、そこでの大衆は購買力を持ったものという意味で客観的には現れているに過ぎない。自身の文学・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・そして文学はこの社会的な発見の実感の中にさえも新しい萌芽をもっています。〔一九四八年一月〕 宮本百合子 「一九四七・八年の文壇」
・・・「最もおくれた労働者の間にも『活字にのせたい』という本格的情熱――掠奪と圧制の上に築かれた現代の社会秩序全体とのたたかいのこういう萌芽的な形態への情熱が発表している」というレーニンの人間らしい洞察に立って具体的モメントをさがしてゆくと、サー・・・ 宮本百合子 「その柵は必要か」
・・・ 生命の萌芽が、一寸の幹を所有するまでの専念な営み――。人は其前に頭を垂れる心を持つべきではないだろうか。 先生は可愛いのだから、此那事を云いたく無い、厭だ厭だと思いながら、西日の差す塵っぽい廊下の角で、息をつまらせて口答えを仕たお・・・ 宮本百合子 「追慕」
・・・ 大衆の中からの労農通信員こそ、新しい文化芸術創造の階級的萌芽である。彼らの中から、そろそろ現れて来はじめた若いプロレタリア作家こそ、存在そのものの本質においてすでに前衛的要求をもっている。 作家同盟は、労農通信員を組織し、その文化・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・ことに歴然とした反撥を示していることも亦将来において展開された芸術家としての特質の萌芽として見落されてはならない一点である。ここには、本を読んだからと云って殴られる台処働きの小僧の中に燃えている人間的尊厳の抗議、給料を祖父にとられる貧しい小・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
出典:青空文庫