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・・・ズボリと踏込んだ一息の間は、冷さ骨髄に徹するのですが、勢よく歩行いているうちには温くなります、ほかほかするくらいです。 やがて、六七町潜って出ました。 まだこの間は気丈夫でありました。町の中ですから両側に家が続いております。この辺は・・・
泉鏡花
「雪霊記事」
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・・・あくる日、雪になろうとてか、夜嵐の、じんと身に浸むのも、木曾川の瀬の凄いのも、ものの数ともせず、酒の血と、獣の皮とで、ほかほかして三階にぐっすり寝込んだ。 次第であるから、朝は朝飯から、ふっふっと吹いて啜るような豆腐の汁も気に入った。・・・
泉鏡花
「眉かくしの霊」