・・・東北の保守性。保守と封建。インフレーション。政治と経済。闇。国民相互の信頼。道徳。文化。デモクラシー。議会。選挙権。愛。師弟。ヨイコ。良心。学問。勉強と農耕。海の幸。」等である。幕あく。舞台しばらく空虚。突然、荒・・・ 太宰治 「春の枯葉」
・・・僕は、あなたの作品には前から好意を感じていたのですがね、どうも、編輯長がねえ、保守的でねえ。」 竹田屋に連れて行こう。あそこに、僕の勘定がまだ千円くらいあった筈だから、ついでに払ってもらいましょう。「ここですか?」「ええ、きたな・・・ 太宰治 「渡り鳥」
・・・すべての世間の科学的常識が進んで行く世の中に文学だけが過去の無知を保守しなければならないという理由はどうにも考えられない。人間の文学が人間の進歩に取り残されてはいたし方がないであろう。むしろ文学者は科学者以上にさらにより多く科学者でなければ・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・現代ならかなり保守的な女学者でも云いそうなことであるが、ともかくもこれは西鶴自身の一種の自由恋愛論を姫君の口を借りて言明したものであることには疑いは無いであろう。それは当代にあってはずいぶんラジカルな意見であろうと思われる。 彼の好色物・・・ 寺田寅彦 「西鶴と科学」
・・・地震や津浪は新思想の流行などには委細かまわず、頑固に、保守的に執念深くやって来るのである。紀元前二十世紀にあったことが紀元二十世紀にも全く同じように行われるのである。科学の方則とは畢竟「自然の記憶の覚え書き」である。自然ほど伝統に忠実なもの・・・ 寺田寅彦 「津浪と人間」
・・・しかるに万葉から古今を経るに従って、この精神には外来の宗教哲学の消極的保守的な色彩がだんだん濃厚に浸潤して来た。すなわち普通の意味での寂びを帯びて来たのである。この寂滅あるいは虚無的な色彩が中古のあらゆる文化に滲透しているのは人の知るところ・・・ 寺田寅彦 「俳諧の本質的概論」
・・・大衆的な某誌は、その反動保守的な編輯方針の中で、色刷り插絵入りで、食い物のこと、悲歎に沈む人妻の涙話、お国のために疲れを忘れる勤労女性の実話、男子の興味をそそる筆致をふくめた産児制限談をのせて来た。 また、或る婦人雑誌はその背後にある団・・・ 宮本百合子 「合図の旗」
・・・そこへ巧みにつけ入って、ドイツ民族の優秀なことや、将来の世界覇権の夢想や、生産の復興を描き出したヒトラー運動は、地主や軍人の古手、急に零落した保守的な中流人の心をつかんで、しだいに勢力をえ、せっかくドイツ帝政の崩壊後にできたワイマール憲法を・・・ 宮本百合子 「明日の知性」
・・・この矛盾的な賃銀問題の落着を可能にしている根拠は、科学主義工業がどこまでも農村生活の現状を保守して、副業にとどめて置こうとしているところにひそんでいるのである。強請して小規模で分散的な副業に止めておこうとする理由は「集団作業の心理状態には被・・・ 宮本百合子 「新しい婦人の職場と任務」
・・・なぜなら民主的な芸術感覚はそのものにおいて、進歩的な人々の生活感覚全体が保守の精神に生きるもののそれとはまるでちがったものであるとおりに、旧い文学感情とはちがうのであるから。 歴史はその仮借なさで「伸子」を永年にわたって変化させ、前進さ・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第六巻)」
出典:青空文庫