・・・と言って「おほほほほ」と軽く笑う。「女の仕事はどうせ其様なものですわ、」とお富も「おほほほほ」と笑ッた。そしてお秀は何とも云い難い、嬉しいような、哀れなような、頼もしいような心持がした。 兎も角も明後日からお秀は局に出ることに話を極めて・・・ 国木田独歩 「二少女」
・・・「ええ、ほほほ」「そしたらあの人が親切に心配してくれたんです」「そしてここの小母さんに、私は母というものがないんだから、こんな家へ置いてもらったらいいのですがって、そうおっしゃったのですってね」「そうでしたかなあ。とにかく小・・・ 鈴木三重吉 「千鳥」
・・・王子はびっくりして、「ほほう、これはちょうほうな男だ。どうです、きょうから私のお供になってくれませんか。私もちょうど、お前さんと同じように、仕合せをさがして歩いているのだから。」と、聞いて見ました。するとぶくぶくはよろこんで、「どう・・・ 鈴木三重吉 「ぶくぶく長々火の目小僧」
・・・それでも博士は、意に介しなさることなく、酔客ひとりひとりに、はは、おのぞみどおり、へへへへ、すみません、ほほほ、なぞと、それは複雑な笑い声を、若々しく笑いわけ、撒きちらして皆に挨拶いたし、いまは全く自信を恢復なされて、悠々とそのビヤホールを・・・ 太宰治 「愛と美について」
・・・あの、貯金のようなものですものな。ほほ。明朝すぐに引越しますよ。敷金はそのおり、ごあいさつかたがた持ってあがりましょうね。いけないでしょうかしら?」 こんな工合いである。いけないとは言えないだろう。それに僕は、ひとの言葉をそのままに信ず・・・ 太宰治 「彼は昔の彼ならず」
・・・ 奥さまは、ほほほといっそ楽しそうにお笑いになり、「そりゃ、もう。」 とおっしゃって、それからしんみり、「光栄でございますわ。」 その日から、私たちのお家は、滅茶々々になりました。 酔った上のご冗談でも何でも無く、ほ・・・ 太宰治 「饗応夫人」
・・・しっかりたのみましたよ、だあさん。ほほ、ほほほ。ごぞんじより。笑っちゃいかん! 僕は金森重四郎という三十五歳の男だ。妻もいることだし、ばかにするな。いったい、どうしたというのだ。ばか。」「拝啓。益々御健勝の段慶賀の至りに存じます。さて今・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・と、お母さん、私のかなしい気持、ちゃんとわかっていらっしゃる癖に、今井田さんの気持を迎えるために、そんなくだらないことを言って、ほほと笑った。お母さん、そんなにまでして、こんな今井田なんかの御機嫌とることは、ないんだ。お客さんと対していると・・・ 太宰治 「女生徒」
・・・そのころ江戸で流行の洒落本を出版することにした。ほほ、うやまってもおす、というような書きだしで能うかぎりの悪ふざけとごまかしを書くことであって、三郎の性格に全くぴたりと合っていたのである。彼が二十二歳のとき酔い泥屋滅茶滅茶先生という筆名で出・・・ 太宰治 「ロマネスク」
・・・「さア事だ。一人でさえ持て余しそうだのに、二人まで大敵を引き受けてたまるもんか。平田、君が一方を防ぐんだ。吉里さんの方は僕が引き受けた。吉里さん、さア思うさま管を巻いておくれ」「ほほほ。あんなことを言ッて、また私をいじめようともッて・・・ 広津柳浪 「今戸心中」
出典:青空文庫