・・・憤りと憎悪とが凍った雪を踏むようにキシ、キシと音をたてて身内に軋むのを感じる。―― 調べの始ったのは午前十一時前であった。今は夕方の六時だ。自分は憎しみによって一層根気づよくなり腰をおとさず揉み合っている。日本共産党をどう考えるかという・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・「今日は随分お早い事だ、 何故こんなに早くいらっしゃるの「お午すぎだよ、 お前の様ではさぞ日が短かかろう 御殿山に居る身内と芝の母の実家へよると云って出て行った。 今頃起きて、起きるとすぐから本にかじりついて居る自分・・・ 宮本百合子 「午後」
・・・ ――○―― 春の暖かさが身内の血をわかして部屋にジーッとして居られないほどその日は好い天気だった。 肇は目覚めるとすぐ、 ああ、どっかへ行って見たい天気だなあ。と思った。 そして第一頭へ浮・・・ 宮本百合子 「蛋白石」
出典:青空文庫