・・・日露戦争のとき、旅順口の攻撃は主として英国の海軍によって行われたものだ、と信じている英国人が少くなかったことは、小説家水上瀧太郎の「倫敦の宿」という作品にかかれている。日本の人民は自分たちの軍事的権力の威力だけで勝利したと信じこまされていた・・・ 宮本百合子 「平和への荷役」
古橋広之進君をはじめ五名の水泳代表選手が、来る十一日のパンアメリカ号で渡米する。全米水上選手権大会へ、これらの日本の若い精鋭が出場するようになったことは全日本の明るい関心をあつめている。合宿先である福田屋旅館の板前さんまで・・・ 宮本百合子 「ボン・ボヤージ!」
・・・灯をつけた低空飛行の水上機が一機、丘すれすれに爆音をたてて舞って来た。「おい、栖方の光線、あいつなら落せるかい。」と高田は手枕のまま栖方の方を見て云った。一瞬どよめいていた座はしんと静まった。と、高田ははッと我に返って起きあがった。そし・・・ 横光利一 「微笑」
出典:青空文庫