・・・彼らは、たいてい栄養の不足や、過度の労働や、汚穢なる住居や、有毒なる空気や、激甚なる寒暑や、さては精神過多等の不自然な原因から誘致した病気のために、その天寿の半ばにも達せずして、紛々として死に失せるのである。ひとり病気のみでない。彼らは、餓・・・ 幸徳秋水 「死刑の前」
・・・て尠いのである、況んや多数の権力なき人、富なき人、弱き人、愚かなる人をやである、彼等は大抵栄養の不足や、過度の労働や、汚穢なる住居や、有毒なる空気や、激甚なる寒暑や、扨は精神過多等の不自然なる原因から誘致した病気の為めに、其天寿の半にだも達・・・ 幸徳秋水 「死生」
・・・大火が起れば旋風を誘致して焔の海となるべきはずの広場に集まっていれば焼け死ぬのも当然であった。これは事のあった後に思うことであるが、吾々には明日の可能性は勿論、必然性さえも問題にならない。 動物や植物には百千年の未来の可能性に備える準備・・・ 寺田寅彦 「烏瓜の花と蛾」
・・・大火が起これば旋風を誘致して炎の海となるべきはずの広場に集まっていれば焼け死ぬのも当然であった。これは事のあった後に思うことであるが、われわれにはあすの可能性はもちろん必然性さえも問題にならない。 動物や植物には百千年の未来の可能性に備・・・ 寺田寅彦 「からすうりの花と蛾」
・・・ このような状態を誘致したおもな原因は、政治というものと科学というものとがなんら直接の関係もないものだ、という誤った仮定にあるのではなかろうかと思われる。昔の政事に祭り事が必要であったと同様に文化国の政治には科学が奥底まで滲透し密接にな・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・西洋人は自然を勝手に手製の鋳型にはめて幾何学的な庭を造って喜んでいるのが多いのに、日本人はなるべく山水の自然をそこなうことなしに住居のそばに誘致し自分はその自然の中にいだかれ、その自然と同化した気持ちになることを楽しみとするのである。 ・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・最後の五は結尾であって、しかもそのあとに企韻の暗示を与え、またもう一ぺん初五をふり返ってもう一ぺん詠み直すという心持ちを誘致するためには、短いほうが有効であるかと思われる。これはあるいは多少牽強付会の説と見られるかもしれないがしかしとにかく・・・ 寺田寅彦 「俳句の精神」
出典:青空文庫