・・・それは余計な御会釈でございますわ。やっぱり二頭曳を雇って来て戴きましょう。そういたすとわたくし今になってはどんな静かな、軟い二頭曳でも役に立たなくなっていると云うことを、あなたにお見せ申しますから、あなたもそのおつもりでお附合いなさいますよ・・・ 著:モルナールフェレンツ 訳:森鴎外 「辻馬車」
・・・「冬は中々好うございます。」 己はその顔を見詰めて、首を振った。そして分疏のように、こう云った。「余計な事を聞くようだが、わたしは小説を書くものだからね。」 この時相手は初めて顔を上げた。「小説家でおいでなさるのですか。デネマルクの・・・ 著:ランドハンス 訳:森鴎外 「冬の王」
出典:青空文庫