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・・・外の部屋は落付きとか感興とかで、却って、隅々のほの暗いことも、或る時は快よいでしょうが、昔の日本の台所のように茶の間からの余光でさぐりさぐり流元をするようでは恐ろしい。 台所は、すべての婦人の問題となっている丈、近頃は、随分、健康に・・・
宮本百合子
「書斎を中心にした家」
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・・・ 頂に固く凍った雪の面は、太陽にまともから照らされて、眩ゆい銀色に輝きわたり、ややうすれた燻し銀の中腹から深い紺碧の山麓へとその余光を漂わせている。 遠目には見得ようもない地の襞、灌木の茂みに従って、同じ紺碧の色も、或るところはやや・・・
宮本百合子
「禰宜様宮田」