・・・ もとより下士の輩、悉皆商工に従事するには非ざれども、その一部分に行わるれば仲間中の資本は間接に働をなして、些細の余財もいたずらに嚢底に隠るることなく、金の流通忙わしくして利潤もまた少なからず。藩中に商業行わるれば上士もこれを傍観するに・・・ 福沢諭吉 「旧藩情」
・・・ また口実に云く、家に余財なきにあらず、身に余暇なきにあらざれども、如何せん、才学を以て人を教うるに足るなし、子を学校に託するは身に才なきがためなりと。この口実も一応もっともなるに聞こゆれども、到底許すべからざるの遁辞のみ。身に覚えたる・・・ 福沢諭吉 「教育の事」
・・・ あるいはたまたま豊に生活して多少の余財ある者もあるべしといえども、その財は、本人が教育上に授けられたる芸能を天下の殖産社会に活用して得たる財にはあらずして、幸に官途に用いられ、さしたる用もなけれども、きまりの俸給に衣食して、少々ずつそ・・・ 福沢諭吉 「慶応義塾学生諸氏に告ぐ」
出典:青空文庫