・・・マン・レイの「海翻車」もなんらの事件を示さず、ただこの海産動物につながる連想の活動を刺激することによって「憧憬のかすみの中に浮揺する風景や、痛ましく取り止めのつかない、いろいろのエロチックな幻影や、片影しか認められないさまざまの形態の珍しい・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・ この映画と同時に有名なマン・レイの「海翻車」を見た。全体としては、正直にいって決して「おもしろい」ものではない。しかし、なにかしら、ほんとうにおもしろいものへの第一歩でありおぼつかない試みであるとはたしかに思われるものである。これ・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(2[#「2」はローマ数字、1-13-22])」
・・・ガリレイをば根柢なしに建てたと評したデカルトの目的は、新自然学の形而上学的基礎附にあったともいわれる。しかしそれは両者の立場を混同して、科学の中に哲学を入れるという如きことではない。唯、科学隆盛以来、哲学は科学の下婢となったという感なきを得・・・ 西田幾多郎 「デカルト哲学について」
・・・役所などから廻ってくる印刷物に相当ムダがあって例えば“祝い終った、さあ働こう”など、全く言わでものことではないかと思います、まるで“朝になった、さあお起きよう”というのと同じことでしょう、こんな標語をレイレイしく印刷するより、もっと内容を厳・・・ 宮本百合子 「回覧板への注文」
・・・にいわれているとおり、著者レイモン・コフマンというアメリカの社会教育者は、ほかに「人類文化史物語」という世界的な名著をもっていて、それはやはり神近さんが訳して岩波文庫に二冊で出ている。 コフマンの目ざすところは「何でも必要な事実だけ、科・・・ 宮本百合子 「科学の常識のため」
・・・星を観測して地動説をとなえたガリレイが、そういう固定観念にぶつかって、生命の危険におびやかされたことを、今日の若い娘たちは、あらまアと彼のために同情し当時の権力の暗愚を憐みまた笑うだろう。 太古のエジプト人たちは、人間の生命は息と眼の中・・・ 宮本百合子 「幸福の感覚」
・・・講和というような事柄は大きい問題だからそれが働く人に関係のある事なら男の組合員がなんとか決議してくれるだろうし、政府もまさか日本のみんながドレイになる様な事は出来まいと考えているとすれば、あんまり、あま過ぎます。吉田首相は去年の秋頃、読売新・・・ 宮本百合子 「今年こそは」
・・・その批評は幾人かの人々が知識人として今日の社会に対している良心のあらわれであるのだけれど、その半面では、モーロアの本質がつまりダラディエやレイノーとそう大して違ったものでもないこと、それだからこそ現象の説明は皮相な政界内幕の域を脱し得ていな・・・ 宮本百合子 「今日の作家と読者」
・・・モーロアは、フランスの敗因をいくつかあげて、その一つの重要なものとして、ダラディエとレイノーの私的な憎悪や醜聞を面白可笑しく喋っている。空々しく、イギリスの政治家は潔白な生活をしているなどと云っているけれども、そして、フランスの防衛の準備が・・・ 宮本百合子 「今日の生活と文化の問題」
・・・地球はまわるといったガリレオ・ガリレイは、宗教裁判にかけられました。原子力の法則――科学的真理――を人類の幸福のために使うか、もっとも富める資本主義の代表者たちの特権を守るために使用するかということは、現代の人類の理性にかけられた課題です。・・・ 宮本百合子 「質問へのお答え」
出典:青空文庫