・・・うまいねえ、わあわあ。」「第四とうしょう、ニッケルメタル。」「ぼくのはさるのこしかけです。」「よし、はじめ。」 柏の木は手を腰にあてました。「こざる、こざる、 おまえのこしかけぬれてるぞ、 霧、ぽっしゃん ぽっし・・・ 宮沢賢治 「かしわばやしの夜」
・・・それからみんなとって、わあわあよろこびました。「だまってろ、だまってろ。」一郎が言いました。 そのとき向こうの白い河原を肌ぬぎになったり、シャツだけ着たりした大人が五六人かけて来ました。そのうしろからはちょうど活動写真のように、一人・・・ 宮沢賢治 「風の又三郎」
・・・みんなは、わあわあ叫んで、吉郎をはねこえたり、水に入ったりして、上流の青い粘土の根に上ってしまった。「しゅっこ、来。」三郎は立って、口を大きくあいて、手をひろげて、しゅっこをばかにした。するとしゅっこは、さっきからよっぽど怒っていたとみ・・・ 宮沢賢治 「さいかち淵」
・・・よくみると、みんなそれは赤いずぼんをはいたどんぐりで、もうその数ときたら、三百でも利かないようでした。わあわあわあわあ、みんななにか云っているのです。「あ、来たな。蟻のようにやってくる。おい、さあ、早くベルを鳴らせ。今日はそこが日当りが・・・ 宮沢賢治 「どんぐりと山猫」
・・・それと一緒に、向うの方で、どっと笑い声が起り、それからわあわあはやすのです。白や茶いろや、狐の子どもらがチョッキだけを着たり半ズボンだけはいたり、たくさんたくさんこっちを見てはやしているのです。首を横にまげて笑っている子、口を尖らせてだまっ・・・ 宮沢賢治 「茨海小学校」
・・・そしてわあわあ叫びながら呑みほしています。その叫びは気のせいか、デストゥパーゴ万歳というようにもきこえました。「あれが山猫博士だな。」ファゼーロが向うの卓にひとり坐って、がぶがぶ酒を呑んでいる黄いろの縞のシャツと赤皮の上着を着た肩はばの・・・ 宮沢賢治 「ポラーノの広場」
出典:青空文庫