・・・もう一週間もたたない内に、あの憎らしい黒ん坊の王は、わたしをアフリカへつれて行ってしまう。獅子や鰐のいるアフリカへ、(そこの芝わたしはいつまでもこの城にいたい。この薔薇の花の中に、噴水の音を聞いていたい。……王子 何と云う美・・・ 芥川竜之介 「三つの宝」
・・・ 見よ、ヨーロッパが暗黒時代の深き眠りから醒めて以来、幾十万の勇敢なる風雲児が、いかに男らしき遠征をアメリカアフリカ濠州および我がアジアの大部分に向って試みたかを。また見よ、北の方なる蝦夷の島辺、すなわちこの北海道が、いかにいくたの風雲・・・ 石川啄木 「初めて見たる小樽」
・・・ 昔、読んだスタンレーの探検記には、アフリカの蛮地で兇猛なあり群に襲われることが書いてあった。たしかに、猛獣に襲われるより怖しいことだったにちがいない。この、少しの反抗力をも有しない彼等に対してすら、その執拗と根気に怖れをなしているので・・・ 小川未明 「近頃感じたこと」
・・・ それらの殖民地の中には、アフリカのカーセイジ人が建てた町もいくつかありました。シラキュースはそのカーセイジ人たちと、いつもひどい仲たがいをしていました。ディオニシアスは遂にシラキュース人を率いて、それらのアフリカ人と大戦をしました。そ・・・ 鈴木三重吉 「デイモンとピシアス」
・・・すなわち、「アフリカに於ける羅馬軍の大将アッチリウス・レグルスは、カルタゴ人に打ち勝って光栄の真中にあったのに、本国に書を送って、全体で僅か七アルペントばかりにしかならぬ自分の地処の管理を頼んでおいた小作人が、農具を奪って遁走したこ・・・ 太宰治 「『井伏鱒二選集』後記」
・・・食後にみんなが学生の唱歌を歌った。アフリカに行っていたドクトルMはズアヘリ土人の歌というものを歌って聞かせたが、それがどれだけ本当のものに似ているかそれは誰にも分らなかった。日本の歌を聞かせろというので、仕方なしにピアノで君が代のメロディだ・・・ 寺田寅彦 「異郷」
・・・ 四「アフリカは語る」を一見した。この種の実写映画は何度同じようなものを見せられても見るたびに新しい興味を呼びさまされるのであるが、今度のはそれが発声映画であるだけにいっそう実証的の興味を増しているようである・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・を見、アフリカの大自然があるというので「ザンバ」を見た。そのうちにトーキーが始まるというので後学のために出かける。そうしているうちにいつのまにか一通りの新米ファンになりおおせたようである。 いちばんおもしろいものは実写ものである。こしら・・・ 寺田寅彦 「映画時代」
・・・ましてやアフリカ大陸の自然の棲所で撮った河馬の映画となれば猶更のことである。 ある製造工場を見学するにしても、実際の場合は一見雑然とした機械の嵐のように運転する中を案内されて説明を聞いても眼が戸まどいをして視るべき要点を掴まえることが困・・・ 寺田寅彦 「教育映画について」
・・・どうもアフリカの内地から来る非常に細かい砂塵らしい。 午後乗り組みの帰休兵が運動競技をやった。綱引きやら闘鶏――これは二人が帆桁の上へ向かい合いにまたがって、枕でなぐり合って落としっくらをするのである。それから Geld Suchen ・・・ 寺田寅彦 「旅日記から(明治四十二年)」
出典:青空文庫