・・・という言葉は実はアラビヤ語であって、一人寂しく寝るという意味を表現する言葉である、その昔アラビヤ人というものはなかなかのエピキュリアンであったから、齢十六歳を過ぎて一人寝をするような寂しい人間は一人もいなかった、ところがある時一人の青年が仲・・・ 織田作之助 「可能性の文学」
・・・ 夫は、黙ってまた新聞に眼をそそぎ、「やあ、また僕の悪口を書いている。エピキュリアンのにせ貴族だってさ。こいつは、当っていない。神におびえるエピキュリアン、とでも言ったらよいのに。さっちゃん、ごらん、ここに僕のことを、人非人なんて書・・・ 太宰治 「ヴィヨンの妻」
古代ギリシアの哲学者の自然観照ならびに考察の方法とその結果には往々現代の物理学者、化学者のそれと、少なくも範疇的には同様なものがあった。特にルクレチウスによって後世に伝えられたエピキュリアン派の所説中には、そういうものが数・・・ 寺田寅彦 「量的と質的と統計的と」
・・・なおエピキュリアンが時を素量的のものと考えたという事を何かで読んだことがあるが、ルクレチウスの中で明白にそう言ってあるのは私には見当たらなかった。またラスウィッツの「原子論史」によると、アラビアのムタカリムンと称する一派の学者は時を連続的と・・・ 寺田寅彦 「ルクレチウスと科学」
出典:青空文庫