・・・、作者自身が、従順な奴隷八千五百万とよばれている人口のうちにこめられていることを自覚して、ファシズムと戦争挑発に反対署名し、全面講和要求に署名したとしても、ジャーナリズムを通して強力にすすめられているエロティシズムの愚民政策の選手であること・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・のような人物をとおしてエロティシズムをも描きだしてみたくなるものなのだろう。以前には、北陸の魚と女性の青光るエロティシズムを正面から描いた室生犀星氏が、最近の「蝶」で、父親という一応熱気をさましたような立場から少女たちの身のそよぎを充分官能・・・ 宮本百合子 「作品の主人公と心理の翳」
・・・ 依然として、読ませて儲けるのが眼目である出版物は、猛烈な新円獲得の目的もあって、この頃はいわゆる大衆性を得るということを、エロティシズムに集注している傾きがある。 戦争は人間性をころした。ましてや、微風のような異性の間の情味や・・・ 宮本百合子 「商売は道によってかしこし」
・・・な生活感情を等しくして結ばれていたが、その他の面では云わば各人各様で、或る作家は芸術至上を説き、或る作家は科学・機械文明との新しい結合で文学を見ようとし、或る人は新心理派へ眼を向け、作家の資質に従ってエロティシズム、グロテスクな追求も行われ・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・現在日本のジャーナリズム文学を大幅に流れているデカダンティズムやエロティシズムの傾向とその作家たちは、けっして日本の現代文学の代表として推される文学的価値はもっていない。「横になった令嬢」を外国語に翻訳させたいと思う日本人はいない。だが、国・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・ファッシズムや、エロティシズムの方向をとることはさし当り見易い一つの危険である。雑誌『行動』主催で、文学の指導性座談会が催された席上で、文学における行動性について、たとえば新居格は「なんでもいいからやれば宜いと思うんだ」といっている。さらに・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
・・・ さらに昨今の特徴として目立つ傾向はデカダニズム、またはエロティシズムです。織田作之助、舟橋聖一、北原武夫、坂口安吾その他の人々の作品があります。 個々の作家についてみればそれぞれ異った作風、デカダンスの解釈とエロティシズムへの態度・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・い生活の反対物をカフェーに見出したところに、子供のうちから消費生活にだけ馴らされた娘の気分と、今日の貴族階級が生活感情の実質においては、赤化子弟に対する宗秩寮の硬化的態度に逆比例するデカダンスや低俗なエロティシズムに浸透されていることが分る・・・ 宮本百合子 「花のたより」
・・・が『三田文学』に連載されやがて一般の興味をひきつけた時代には、そのエロティシズムも、少女から脱けようとしている特異な江波の生命の溢れた姿態の合間合間が間崎をとらえる心理として描かれており、皮膚にじっとりとしたものを漲らせつつも作者の意識は作・・・ 宮本百合子 「文学と地方性」
出典:青空文庫