・・・ゆっくりオリジナルな投身地を考えているような余裕はないのみならず、三原山時代に浅間へ行ったのでは「新聞に出ない」のである。 このように、新聞はその記事の威力によって世界の現象自身を類型化すると同時に、その類型の幻像を天下に撤き広げ、あた・・・ 寺田寅彦 「ジャーナリズム雑感」
・・・いくら単語をたくさん覚え、文法をそらんじてもよい文章は書けないと同様に、いくら数学に習熟してもそれで立派なオリジナルな論文が書けるとは限らない。これはいうまでもない事である。 数学が一種の国語であるとしても、それはきわめて特別な国語であ・・・ 寺田寅彦 「数学と語学」
・・・ このような人間の心理に関する分析的な考察も、すべてがこの著者のオリジナルなものではないであろう。清少納言から西鶴を通じて現代へ流れて来ている一つの流れの途中の一つの淀みのようなものに過ぎないかもしれないが、しかし、兼好法師という人の頭・・・ 寺田寅彦 「徒然草の鑑賞」
・・・日本にオリジナルな現象ではないかという気がする。このような特異の現象の生ずるにはそれだけの特異な理由がなければならない。また、こうなるまでには、こうなって来た歴史があるであろうが、それは自分にはわからない。 しかしこの現象から、日本人は・・・ 寺田寅彦 「読書の今昔」
・・・この人もオリジナルな人である。この人の習作や沢山の未成の絵を並べて、そして一夜漬けの模造品を雑作もなく塗り上げる人達に見せるのもいいかと思う。 ジョコンダの絵と、ルウベンスの模写が出ている。模写の出来る絵と出来ない絵とがあるとすれば、こ・・・ 寺田寅彦 「二科会その他」
・・・ いかにオリジナルな変異の産物でも当代の多数の観賞者が見てちっともおもしろくなかったり、ひとり合点で意味のわからないようなものは、わざわざ勦絶に骨を折らなくても当代の環境で栄えるはずはないであろう。全く死滅しないまでも山椒魚か鴨の嘴のよ・・・ 寺田寅彦 「俳句の型式とその進化」
・・・is revealed in his prompt assistance and kind encouragement given to any one engaged in any kind of original research, h・・・ 寺田寅彦 「PROFESSOR TAKEMATU OKADA」
・・・一つにはこれらの画家が子規と特別な親交があって、そうしてこの病友を慰めてやりたいという友情が籠っていたであろうし、また一つには当時他に類のなかったオリジナルでフレッシな雑誌の体裁を創成するということに対する純粋な芸術的な興味も多分に加わって・・・ 寺田寅彦 「明治三十二年頃」
・・・そういううわさのありうるほどにオリジナルなものであったのである。しかし今読んでみたら案外変ではないかもしれないと思う。日下部博士はルクレチウス的要素を多分に持った学者であったのである。なおエピキュリアンが時を素量的のものと考えたという事を何・・・ 寺田寅彦 「ルクレチウスと科学」
出典:青空文庫