・・・それには驚かなかったが、バラックの中で白米のカレーライスを売っているのには驚いた。日本へ帰れば白米なぞ食べられぬと諦めていたし、日本人はみな藷ばかり食べていると聴いて帰ったのに、バラックで白米の飯を売っているとはまるで嘘のようであった。値を・・・ 織田作之助 「世相」
・・・千日前の愛進館で京山小円の浪花節を聴いたが、一人では面白いとも思えず、出ると、この二三日飯も咽喉へ通らなかったこととて急に空腹を感じ、楽天地横の自由軒で玉子入りのライスカレーを食べた。「自由軒のラ、ラ、ライスカレーはご飯にあんじょうま、ま、・・・ 織田作之助 「夫婦善哉」
・・・バニカンタは、何不自由ない暮をし、毎日二度ずつも魚のカレーを食べられる程だったので、彼を憎んでいる者が、決して無いではなかったのです。段々、妻やその他女の人達が喧しく云い出したので、到頭バニカンタは、二三日何処へか出て行きました。そして、間・・・ 著:タゴールラビンドラナート 訳:宮本百合子 「唖娘スバー」
出典:青空文庫