・・・「君、キャッチボールをしようか。」と、正吉くんが、いうと、「うん、こんどしよう。妹が、待っているから、早く帰らなければならないよ。」「君の家は、遠いの。」「遠いけど、自転車に乗ってゆけば、すぐだ。君、いっしょに遊びにおいでよ・・・ 小川未明 「少年と秋の日」
・・・ 私は局員たちを相手にキャッチボールをはじめました。へとへとになるまで続けると、何か脱皮に似た爽やかさが感ぜられ、これだと思ったとたんに、やはりあのトカトントンが聞えるのです。あのトカトントンの音は、虚無の情熱をさえ打ち倒します。 ・・・ 太宰治 「トカトントン」
・・・ 苅ったところで達治とキャッチボール○多賀さんの山 が右手 寺の山 左手 むこうはAの家。 赤いみやこに襦袢で一日水づかいしている馬鹿でキリョウよしの女房○家の並んで岬のように出ている四つの棟棟と棟との間に横タテに・・・ 宮本百合子 「Sketches for details Shima」
出典:青空文庫