・・・ 人々が寝室に退くその一瞬間前の、ややとり散した位置のまま思い思いに彼方此方を向いて居る椅子や、少し隅々のまくれたカーテンや歪められたクッションなどは、却って、日のある時には思いもよらなかった暗示的な感銘を与える。 若しその気分をも・・・ 宮本百合子 「無題(三)」
・・・ 小さい門、リラの茂、薄黄色模様の絹の布団、ジャケツ、黄色のクッションにもたれて欧州婦人のジェスチュアをする五十五歳の光子クーデンホフ夫人。 宮本百合子 「無題(八)」
・・・ 楽な方向へクッションのある方へ方へと体をずりこますことで、一層日の光にも堪えぬものとなってゆくのです。 私は賢しこい読者に多くを云わず、或る方々は全集の装幀が華やかだから購読なさるであろうバルザックの作品の中から、一つの文句をとり・・・ 宮本百合子 「私も一人の女として」
出典:青空文庫