・・・そのままでもよし、卵クリームでもあると大へんな御馳走になります。 変りふろふき これからはよくどちらでも大根ふろふきが流行ります。大好きですがどうも胡麻をかけただけでは物足りないので一工夫して、挽肉を味噌、醤油・・・ 宮本百合子 「十八番料理集」
・・・ 若い人達が頭にさして居る様な、白い野菊の花だの、クリーム色をみどりでくまどったキャベージに似たしなやかな葉のものや、その他赤いのや紫のや、沢山の花のしげって居る大きな鉢を見て居るうちに、それだけが一つの小さい世界の様に思えて来る。・・・ 宮本百合子 「草の根元」
・・・ペン皿には御存知の赤い丸い球のクリーム入れがあって、太郎が二階へ来ると、私はいそいでそれをかくすの。握ったら可愛がってはなさないのです。ところがおばちゃんにしろ、これをどっかへころがされては一大事とばかり、太郎と同じように眼玉をギラギラさせ・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ヴィンナ、トウストマダムという女 朱 赤と薄クリームの肩ぬき的な洋装、小柄二十四五位 夕方五時すぎ。電車道のところを見るとさほどでもないが濠の側を見ると、濃くもやが立ちこめて四谷見附に入る堤が ぼんやりかすんで見える。電・・・ 宮本百合子 「情景(秋)」
・・・ お茶のテーブルに花をまき、クリームを銀器で出すという風。 長尾半兵衛の息、ケイオーに七八年居、いつ卒業するかあてのない男と婚約。――自分が引まわせる気のよい男という条件で。長尾の地所が二十万円でうれたら結婚する。それまで娘早稲田に・・・ 宮本百合子 「一九二五年より一九二七年一月まで」
・・・緑の豊かな梢から、薄クリーム色に塗料をかけた、木造ながら翼を広やかに張った建物が聳え立っている。そのヴェランダは遠目にも快活に海の展望を恣ままにしているのが想像される。大分坂の上になるらしいが、俥夫はあの玄関まで行くのであろうか。長崎名物の・・・ 宮本百合子 「長崎の印象」
・・・そのクリーム色に塗られた近代風のドアが開くと、その一間住宅であるアパートメントの瀟洒な布張のアーム・チェアに細君がかけて編物をしています。ドアを開けてくれたのはそこの主人でした。 シカゴ市の有名な建築家である某氏が、一寸来訪の意味を説明・・・ 宮本百合子 「よろこびの挨拶」
・・・ 人通りのない鉄柵に沿った暑いがらんとした通りをアイス・クリーム屋が通る。手押車にブリキ罐だ。 ――JOES《ジョース》 ICE《アイス》! JOES《ジョース》! 三片! 古本屋みたいな窓の中はぎっしりの本だ。あなたの運命・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
出典:青空文庫