・・・その内に酔っている同僚の一人が、コニャックの杯をひっくり返した。それに驚いてあたりを見ると、いつのまにか日本人の赤帽は、カッフェから姿を隠していた。一体あいつは何だったろう。――そう今になって考えると、眼は確かに明いていたにしても、夢だか実・・・ 芥川竜之介 「妙な話」
・・・そしてコニャックを飲む。往来を眺める。格別物を考えはしない。 用事があってこの店へ来ることはない。金貸しには交際があるが、それはこの店を禁物にしていて近寄らない。さて文士連と何の触接点があるかと云うと、当時流行のある女優を、文士連も崇拝・・・ 著:ダビットヤーコプ・ユリウス 訳:森鴎外 「世界漫遊」
出典:青空文庫