・・・現にその小さい机の上には蘭科植物を植えるのに使うコルク板の破片も載せてあった。「おや、あの机の脚の下にヴィクトリア月経帯の缶もころがっている。」「あれは細君の……さあ、女中のかも知れないよ。」 Sさんは、ちょっと苦笑して言った。・・・ 芥川竜之介 「悠々荘」
・・・このコルクのピストルはマヤに遣るの。(コルクを填こわくって。わたしがお前さんを撃ち殺すかと思ったの。まさかお前さんがそんなことを思うだろうとは、わたし思わなくってよ。それはわたしが途中から出てあの座に雇われたのだから、お前さ・・・ 著:ストリンドベリアウグスト 訳:森鴎外 「一人舞台」
・・・男の子はまるでパイを喰べるようにもうそれを喰べていました、また折角剥いたそのきれいな皮も、くるくるコルク抜きのような形になって床へ落ちるまでの間にはすうっと、灰いろに光って蒸発してしまうのでした。 二人はりんごを大切にポケットにしまいま・・・ 宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」
・・・あまり煙の少ないときは、コルク抜きの形にもなり、煙も重いガスがまじれば、煙突の口から房になって、一方ないし四方におちることもあります。」 大博士はまたわらいました。「よろしい。きみはどういう仕事をしているのか。」「仕事をみつけに・・・ 宮沢賢治 「グスコーブドリの伝記」
・・・あまり煙の少ない時はコルク抜きのようにもなります。」「よろしい。お前は今日の試験では一等だ。何か望みがあるなら云いなさい。」「書記になりたいのです。」「そうか。よろしい。わしの名刺に向うの番地を書いてやるから、そこへすぐ今夜行き・・・ 宮沢賢治 「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」
出典:青空文庫