・・・「流血の検挙をよそに闇煙草は依然梅田新道にその涼しい顔をそろへてをり、昨日もまた今日もあの路地を、この街角で演じられた検挙の乱闘を怖れる気色もなく、ピースやコロナが飛ぶやうに売れて行く。地元曾根崎署の取締りを嘲笑するやうに、今日もま・・・ 織田作之助 「大阪の憂鬱」
・・・ 床の中で愚図々々していると、小川君が、コロナを五つ六つ片手に持って私の部屋にやって来た。「先生、お早う。ゆうべは、よく眠れましたか?」「うむ。ぐっすり眠った。」 私は隣室のあの事を告げて小川君を狼狽させる企てを放棄していた・・・ 太宰治 「母」
・・・なかんずく月の表面の凹凸の模様を示すものや太陽の黒点や紅炎やコロナを描いたものなどはまるでうそだらけなものであった。たとえば妙な紅炎が変にとがった太陽の縁に突出しているところなどは「離れ小島の椰子の木」とでも言いたかった。 科学の通俗化・・・ 寺田寅彦 「断水の日」
・・・(コロナは六十三万二百 ※‥‥‥ ) 楊の木でも樺の木でも、燐光の樹液がいっぱい脈をうっています。 宮沢賢治 「イーハトーボ農学校の春」
出典:青空文庫